AAR Japan［難民を助ける会］は、今年7月の大雨（令和5年7月大雨）で大きな被害を受けた秋田県秋田市、五城目町で炊き出しや在宅避難者への食事の提供、被災世帯への家電の提供などの生活再建支援を続けています。秋田市内で10月に実施した障がい者宅の復旧支援について、国内災害チームの大原真一郎が報告します。

「今夏の水害は初めての経験で、何をどうすればいいか分からず、助けてと言える相手も知らなかった」。知的障がいのある娘と母親の3人で暮らすKさんは話します。

AARは災害発生から間もない8月初旬、NPO法人あきた結いネットと協働で支援を開始し、秋田市楢山地区で在宅被災者にお弁当を配付しながら、個別訪問調査を実施しました。同地区では多くの家屋が浸水被害を受けましたが、建物の復旧や家具・家電の買い替えができず、そのまま生活を続けている人も少なくありません。

Kさん一家もそうした世帯のひとつ。食事を届けに何度か足を運び続けたある日、Kさんに「家の中を見てみて」と言われ、室内の状態を初めて目にしました。水を吸った床が抜けそうで、黒カビが壁を覆い、異臭が立ち込めていました。水に浸かった家具もそのままになっていました。

最高気温が連日35度を超える猛暑の中、居間では障がいのある小学生の娘さんがテレビを見ていました。他所に避難もできないまま、扇風機ひとつだけで、床が抜けそうな被災家屋で生活している状況に強い危機感を覚えました。そこで、取り急ぎ扇風機２台と洗濯機を調達し、支援物資としてお届けしました。

Kさんは娘さんを毎日世話する傍ら、パートで生計を立てており、火災保険の水害補償は未加入でした。行政による家屋の罹災判定は「半壊」だったため、公的助成は見舞金を含めても少額に過ぎません。自力での生活再建が困難なのは明らかでした。

水に浸かった家財道具は業者に撤去を依頼すると、作業代に加えて廃棄費用がかかってしまいます。AARは地元の社会福祉協議会ボランティアセンターにつないで、使えなくなった家具を搬出してもらいました。ボランティアが作業した場合、災害ゴミとして行政が無料で処分します。

次いで浸水した床を復旧する工程として、水害支援に特化した建設業者のプロボノ集団「風組関東」（小林直樹代表／東京）に依頼し、腐った床をはぎ取り、乾燥・消毒・清掃をしてもらい、AARは木材・断熱材などを提供しました。

今のところ畳替えフローリング施工までは手が及ばず、仮復旧ではありますが、少なくとも衛生的な環境で生活できるように整えています。今後は良心的な工務店につないだり、行政の生活再建支援を活用したりしながら、Kさん一家を支えていく予定です。

大規模災害の被災地では、平時から弱い立場にある高齢者や障がい者など「災害弱者」とされる人々は、公的助成だけでは支援が足りず、自力での生活再建がとても難しい状況に置かれる傾向にあります。Kさんたちのように被災したままの状態で生活を続けざるを得ない被災者も少なくありません。

東日本大震災（2011年）の被災地では半壊した家に住み続けた結果、低体温症で亡くなった方もいます。AARは支援から取り残される被災者がいないように、生活再建まで寄り添う「伴走型」の支援を心掛けています。

東北の厳しい冬の訪れを前に、秋田の大雨被災地では家屋の復旧が急がれるとともに、暖房器具などが必要になっています。AARの国内災害被災地支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

※指定された緊急支援活動に必要な資金を上回るご協力をいただいた場合は、次なる緊急支援などに活用いたします。あらかじめご了承ください。