2011年のシリア内戦発生から12年余り、AAR Japan[難民を助ける会]は2014年から現地協力団体を通じて、シリア国内避難民への食料配付や地雷・不発弾回避教育、農業・障がい者支援などを実施してきました。AARの支援を受けて自分の脚で歩けるようになった11歳の少年と家族のメッセージをお伝えします。
「ちゃんと治療を受けて、歩くことができるようになったことをとても誇りに思うよ。将来は学校の先生になりたいな」
友だちと並んで歩き、笑顔で会話するマフムード・アキダさん(11歳)。シリア北西部イドリブ県で生まれましたが、すでに激化していた内戦の影響で出産時に適切な医療サービスを受けられず、脳性まひになってしまいました。家族とともに2016年に村を離れ、現在は国内の避難民キャンプで暮らしています。
国連の調査によると、長引く内戦の影響でシリアの総人口の28%、およそ3人に1人が何らかの知的・身体障がいを抱えています。そのうちの多くの人々が治療やリハビリ、補装具(車いすや義足)など必要なケアを受けられないでいます。
故郷の村から避難する前、マフムードさんの父親は菓子店で働き、一家は落ち着いた暮らしをしていました。しかし、村では砲撃が5年近く続き、すべてを捨てて逃げざるを得なかったといいます。母親は「私たちには今、わずかな家具と生活用品しかありません。マフムードは歩けるようになって、他の子どもたちと同じように暮らすことを夢見ています。でも、パン屋で働いている夫の収入は少なく、息子を満足に医療施設に通わせることもできません」と話します。
AARは現地協力団体と連携し、避難民キャンプで理学療法、心理面の支援、看護・介護者支援、補装具を提供してきました。現地の支援チームはマフムードさんを診察し、痙性まひ(脳やせき髄の問題で手足が突っ張ることによる運動障害)と筋力低下を確認。自宅でできる理学療法(体操やマッサージ、温熱・電気療法によって運動機能の維持・改善を図る療法)を伝え、家族と一緒に継続的に行いました。
担当の理学療法士は「マムフードさんとても熱心に取り組み、12回の治療後、身体の動きが著しく改善しました。継続的な治療は彼の精神状態の改善や運動能力の向上に大きく貢献しています」と報告します。
両親も声を弾ませます。「補助具を使って、息子が立って歩けるようになったのを見た時は、とてもうれしかったです。将来、彼が学校に通い、教育を受けられる日が来るかもしれません。このようなサービスを他の多くの障がい者が受けられるようになることを祈っています」
内戦による過酷な環境の下でも、子どもたちは回復力と生命力に満ちています。AARのシリア国内避難民支援へのご理解・ご支援をお願い申し上げます。