活動レポート Report

共生社会を目指して~「世界盲人連合」地域協議会に参加@タイ

2023年11月30日

190カ国・2億5,300万人の視覚障がい者の声を代弁する国際組織「世界盲人連合(WBU)」のアジア太平洋地域協議会の中期総会が11月26~29日、タイ・プーケット県で開催され、AAR Japan[難民を助ける会]の田畑美智子理事、東京事務局の田丸敬一朗(いずれも障がい当事者)、伊藤美洋の3人が参加しました。田丸が現地から報告します。

パネルディスカッションの様子

組織運営についてのパネルディスカッションで発言するAARの伊藤=タイ・プーケット県で11月28日

AI・ICT拡大の影響など論議

WBUアジア太平洋地域協議会は、視覚障がいと弱視の人々の平等な機会の創出、および社会参加を通じた地位向上を目的に、東アジア、太平洋・オセアニア、東南アジアの3地域で活動しています。今回の中期総会にはアジア太平洋地域23カ国のうち14カ国・地域から約300人が参加しました。

参加者の集合写真

各国から集まった視覚障がい者団体の関係者

初日の開会の辞で、WBUのマーティン・エイベル・ウィリアムソン代表は、新型コロナウイルス感染拡大で視覚障がい者の多くが職を失うなどの影響を受けたことに触れ、「視覚障がいのニーズを満たすために、福祉サービスを受けるだけではなく、自分たちが制度設計に積極的に参加していかなければならない」と訴えました。

続く全体会議では、「現代社会における視覚障がい者のためのスマートシティ(※1)」をテーマに、国連人間居住計画(ハビタット)のスリンバサ・ポプリ氏、WBU のハンネス・ジュフリン・ラグレィウス氏がそれぞれの見解を発表。さまざまなデバイス(情報端末や周辺機器)を手に入れるための資金の確保、視覚障がい者へのトレーニングの重要性が指摘されました。AI(人工知能)やICT(情報通信技術)の広がりは、視覚障がい者の生活をも大きく変革していくため、情報アクセスに関する法制度の整備に向けた提言活動がいっそう重要になることを改めて感じました。

参加14カ国・地域代表の発表では、WBUアジア太平洋地域協議会の武井徹理事が、日本では2019年に読書バリアフリー法、2021年に情報コミュニケーション法が制定されたこと、鉄道駅の無人化が進んで視覚障がい者がサポートを得にくくなっていることなどが報告されました。

壇上で発表する日本代表の武井徹氏。右側には司会者とWBUAP会長が座っている。

日本の取り組みを発表するWBU-APの武井徹理事(左)

香港代表は、視覚障がい者の就労支援の一環として、ユーチューバーを育成したり、映画やドラマに加えてスポーツ実況やパフォーマンスに音声ガイドを付けたりする取り組みが紹介され、とても印象に残りました。また、東ティモールからは、2002年の独立後、未整備なままの制度が多く、教育や雇用分野にさまざまな課題があることが報告されました。

視覚障がい者団体の組織運営

2日目に行われた組織運営に関するパネルディスカッションには、AAR東京事務局の伊藤が香港、ニュージーランドの代表と登壇。伊藤は「障がいのある人もない人も共に暮らす社会を創るには、情熱と意志を持って人々の共感を呼ぶ働きかけを行うことが重要」と訴え、他のパネリストからも「自分たちのビジョンを持ち、価値を訴えていく必要がある」「多様なバックグラウンドの人たちと連帯するために、相互理解と夢の共有を進め、ともに戦略を立てていきたい」と述べました。それぞれ異なるアプローチからの発言でしたが、自分たちの活動にどのように価値を付加していくのかが成功のカギになるという点で、明確な共通性が感じられました。

その後の分科会では、伊藤がAARのファンドレイジングの取り組みについて、具体的事例を盛り込みながら紹介。参加者からは「どのように企業に興味を持ってもらえば良いのか」「寄付者のデータ管理方法をどうしているか」「助成依存から脱却する方法は」など実践的な質問が相次ぎました。

「誰ひとり取り残されない社会」宣言を採択

最終日は「誰ひとり取り残されない社会を目指す」プーケット宣言を全会一致で採択しました。その中には、障がい者権利条約およびマラケシュ条約(※2)の批准と実施はもちろんのこと、建物や公共交通、情報のアクセシビリティ向上を含むスマートシティ構想の推進などが明記されました。また、障がい者の雇用促進に向けた政策の充実などを政府や国際機関などに求めること、参加者がリーダー育成、訪問支援、ファンドレイジングに積極的に取り組むことなども盛り込まれました。

AARは国内外の障がい者支援を重要な柱のひとつに位置付けています。今後もこのような国際会議の場で当会の取り組みを広く発信するとともに、世界各国のさまざまな当事者団体とネットワークを構築し、障がい者支援をよりいっそう充実させてまいります。

本会議のバナー前に立つ伊藤、田畑、田丸の写真

本会議に出席した(左から)AARの伊藤、田畑理事、田丸

(※1)ICTなどの新技術を生かして住みやすい都市をつくること。
(※2)2013年6月に採択された国際的な条約。視覚障がい者や文字の読み書きに困難のある者などが、発行された著作物を利用する機会を促進するために制定され、日本では2019年1月1日発効。

田丸 敬一朗TAMARU Keiichiro東京事務局

大学卒業後、一般企業、障がい当事者による国際NGOなどに勤務。2022年AAR入職。障がい者支援、国内避難民支援を担当。先天性の視覚障がい。

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