能登半島地震の被災地では、家を失った多くの方々が食料や衣類、日用品などが不足したまま、避難所などで10日余り不自由な生活を続けています。AAR Japan[難民を助ける会]緊急支援チームは、大きな被害を受けた石川県内の避難所に支援物資をお届けしながら、被災者の皆さんの思いを伺いました。
輪島市港コミュニティセンターに身を寄せる方々に11日、下着・靴下などの衣類と衛生用品をお渡ししました。水のいらないシャンプーを受け取った女性(75歳)は「私もみんなも、元日からずっと髪を洗っていないから本当にありがたい」と喜んでくれました。避難所では着の身着のまま避難した被災者が洗濯することも難しいため、新しい下着など着替えを求める声が少なくありません。この女性は「今日は息子が金沢から着替えを持って来てくれて、やっときれいな服を着たけれど、避難してから10日間は着替えることもできなかった。仕方なく紙パンツをはいているお年寄りもいるね」。
避難所には車中泊などが難しい高齢者の姿が目立ちます。女性は同年代の人たちの顔を見渡し、「ここは元々地域力があるから、こんな状況でもみんなで頑張っているんだよ」と話します。「それぞれの家から食材を持ち寄って、炊き出しを分け合って食べています。でも、お正月に用意していた料理や食材もそろそろ終わるから、これからはレトルト食品ばかりになるかな……」。先行きが見えない不安に表情が曇ります。
AARが珠洲市立若山小学校の避難所で実施する炊き出し出しを、ボランティアとして手伝ってくれた60代男性は、「公務員を定年退職して年金生活を送っていたところ、今回の地震で高齢の母親と妻と3人で暮らしていた家が全壊してしまった」といいます。自分の小船を持って趣味の釣りを楽しんでいましたが、よく通っていた漁港は津波でコンクリートの岸壁が損壊するなど、壊滅的な被害を受けました。今の心境をたずねると、「これからのことは何も考える気にならないよ。気持ちは後ろ向きではないけど、決して前向きでもない。今は横向きで生きていくよ。ハッハッハ!」と笑って答えてくれました。
避難生活が長引く中、被災者の皆さんは互いに支え合って懸命にこの難局を乗り越えようとしています。AARは避難所での炊き出しのほか、多くの企業・団体と連携して、非常用の携帯トイレと小型テント、衛生用品、衣類などをお届けしていますが、支援はまだまだ足りていません。
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