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活動レポート Report

コロナ感染にさらされる世界の難民たち :世界難民の日(6月20日)

2020年6月17日

6月20日は「世界難民の日」。今年は新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、世界の難民・避難民7,000万人超(2018年末時点)が、衛生状態が悪く医療体制も不十分な難民キャンプや居住地で感染の危険にさらされています。感染防止のための移動制限などによって、多くの国々で人道支援活動が一時中断を余儀なくされていますが、AAR Japan[難民を助ける会]は現地スタッフを通じて衛生用品の配付、衛生啓発活動を実施するとともに、感染終息後に事業を本格的に再開するための準備を進めています。
*新型コロナ感染による死者数は6月15日現在/世界保健機関(WHO)集計

ロヒンギャ難民キャンプで死者

ミャンマーから逃れた累計100万人超のイスラム少数民族ロヒンギャが滞留するバングラデシュ南東部のコックスバザール県。60万人余りが極度に密集した環境で暮らすクトゥパロン難民キャンプで5月末、難民男性(71歳)がコロナに感染して亡くなるなど、これまでに2人が死亡しました。キャンプ内の感染は5月中旬に始まり、検査では少なくとも39人の陽性反応が確認されたほか、ホストコミュニティ(周辺の集落)の死者は24人に上ります。

バングラデシュ政府は3月下旬、首都ダッカなど広範な地域でロックダウン(都市封鎖)を発令したものの、日々の生活費を稼ぐ必要がある貧困層の活動まで制限できないため、感染拡大の勢いは止まらず、同国の死者は1,171人に上ります。また、難民を乗せた密航船がコロナ感染への懸念を理由にマレーシアやタイで着岸を拒否され、行き場を失ってベンガル湾を漂流中に数十人が死亡する事態も起きています。

60万人余りが暮らすバングラデシュ南東部コックスバザールのクトゥパロン難民キャンプ。コロナ感染が広がり、死者も確認されている(2018年1月)

AARは2018年1月以降、クトゥパロンを含む難民キャンプ、およびホストコミュニティでトイレ・水浴び室、井戸を多数建設するとともに、衛生啓発活動を通じて難民と地域住民の衛生環境改善に取り組んできました。国連機関や他団体も水・衛生、保健・医療分野の支援に力を入れていますが、キャンプ内では1平方キロ当たり約4万人が密集し、これは世界で最も人口密度が高いバングラデシュの40倍近くになります。国連関係者は「狭いテントが密集するキャンプで互いに適度な距離をとるのは不可能で、ひとたび感染が広がれば大惨事になる。治安上の理由で政府が通信を遮断しているため、コロナに関する正確な情報が届いていない」と警戒を強めています。「公式発表は氷山の一角に過ぎず、キャンプ内の感染は既に急速に広がっている」と話す援助関係者もいます。

シリア難民360万人余りが暮らすトルコでは、感染が収束する方向にありますが、感染者数は中東最多の17万8,239人、死者は4,807人に上ります。トルコ政府は感染拡大防止のための対策を次々に打ち出しましたが、トルコ語を解さないシリア難民に向けた特別なサービスはなく、主に都市部に居住する難民の人々は情報不足による不安を抱えていました。そこで、AARはコロナ関連のアラビア語版ウェブサイトを特設し、政府の施策や衛生啓発の情報を提供するとともに、経済的に困窮する難民の家族が食料品や日用品を買えるように、これまでも支援してきた367世帯に電子マネー(約1万円相当)を配付しました。

アジア・アフリカで感染拡大続く

アフリカでは4月頃から感染が拡大し、今のところ感染者数17万5,503人/死者4,111人に上ります。世界保健機関(WHO)当局者は6月8日、「アフリカの複数の国々で中南米や南アジアで起きているような急速な感染拡大が見られる」と重大な懸念を表明しました。WHOは5月上旬の時点で「効果的な対策が講じられなければ、この1年間で2,900万~4,400万人が感染し、最大19万人が死亡する可能性がある」と警告しています。

AARが南スーダン難民の支援事業を実施するウガンダでは、かつてエボラ出血熱の流行を経験した同国政府が3月下旬までに全国の学校閉鎖、私用車による移動禁止などの厳しい措置を打ち出しましたが、5月上旬から感染が拡大しています。AARの事業地である同国北部の難民居住地内では、今のところ感染は伝えられていませんが、「コロナ感染拡大と相まって国連世界食糧計画(WFP)の食糧供給が大幅に減り、人々のストレスが高まっている」「難民を受け入れていたウガンダ人たちも感染や飢餓を恐れるようになり、難民との共存を拒むようになっている」などの声が聞かれ、人道支援の停滞に加えて、心理的な影響が広がっています。

ウガンダ北部オボンギ県のパロリーニャ難民居住地の水汲み場に集まる南スーダン難民。現在は水汲みの際、互いに間隔を空ける措置が取られている(2020年2月)

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、世界の難民の8割、国内避難民の大多数は、アジア、中東、アフリカなどの低・中所得国に集中しています。彼らは社会的に疎外された最も弱い立場にあり、水・衛生設備や医療サービスに充分アクセスできていないため、通常の生活を送っている場合よりはるかに高いコロナ感染のリスクに直面しています。日本では緊急事態宣言が5月25日に全面的に解除され、「新しい生活様式」への移行が始まりましたが、世界的に見ると、アジア・アフリカ、あるいは南米諸国では依然として感染拡大に歯止めがかかっていません。

国内外で緊急支援を実施中

AARは4月以降、トルコ、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ウガンダ、ケニアの各事務所を通じて、難民や障がい者家庭を対象に、衛生用品・食料品の配付や衛生啓発、情報提供の緊急対応を進めるとともに、日本国内でも障がい関連団体・障がい福祉施設にマスクや消毒液などを届けています。

AAR は政治・思想・宗教的に中立な立場で、支援から取り残されがちな人々を優先して支援活動を実施しています。日本を含めて、世界中の誰もが等しく新型コロナウイルスの脅威にさらされる今、互いの思いやりと連帯こそが、この未曽有の難局を乗り越える力になると考えます。皆さまからの温かいご支援・ご協力を重ねてお願い申し上げます。

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