活動レポート Report

学ぶためのノートと鉛筆を:サヘル・ローズさんウガンダ訪問記1

2024年3月8日

世界は今、ロシアによるウクライナ軍事侵攻をはじめ、次々と発生する紛争や災害のニュースであふれています。その一方で、長年解決されないまま忘れ去られた難民問題も存在します。そのひとつであるウガンダの難民居住地を、俳優サヘル・ローズさんがAAR Japan[難民を助ける会]とともに訪問しました。サヘルさんと子どもたちの出会いの旅を、同行した東京事務局の太田阿利佐が3回にわたって紹介します。

初等教育校生徒にノートと鉛筆を渡すサヘル・ローズさん

チャングワリ難民居住地にあるモンバサ初等教育校で子どもにノートと鉛筆を手渡すサヘルさん =ウガンダ西部で2024年2月21日撮影

13万人が暮らす難民居住地

サヘルさんが今回訪問したのは、ウガンダ西部にあるチャングワリ難民居住地の初等教育校3校と中等教育校1校、さらに居住地に隣接する地域の初等教育校1校、中等教育校1校の計6校です。いずれもAARが支援しており、うち3校で新学期を機にノートと鉛筆を配付しました。いくつかの学校では子どもたちが歌や踊りを準備して、サヘルさんとAARスタッフを歓迎してくれました。

アフリカ東部の内陸国ウガンダは、隣接する南スーダンやコンゴ民主共和国などから150万人を超える難民を受け入れています。難民に寛容な政策を採用し、就労や移動の自由のほか、教育など公共サービスを受ける権利も認められています。AARが支援を続けるチャングワリ難民居住地は、広さ約91平方キロ(東京ドーム1,940個分)に主にコンゴ難民13万人が暮らしています。

首都カンパラから車で約4時間半、西部の都市ホイマに到着し、さらに100キロほど西に進むとチャングワリ難民居住地があります。難民の人たちは地元住民と同様、バナナやトウモロコシなどの畑に囲まれた、木と土でできた小さな家に暮らしています。洋服や日用品を売る商店もあります。入り口のゲートと看板がなければ、難民居住地とは気が付かないぐらいです。

難民居住地内の典型的な住居の写真

チャングワリ難民居住地内の住宅。電気、水道はなく、水は井戸で汲んで運ぶ

1教室に100人以上の子どもたち

2月19日午前、最初の訪問校であるングルウェ初等教育校に到着すると、子どもたちが好奇心いっぱいの表情でサヘルさんに近づいてきました。3年生のクラスは歌を歌いながら、サヘルさんを待っていてくれました。

「教室が足りないと聞いてはいましたが、これほどとは……」。教室いっぱいの子どもたちの姿にサヘルさんが目を丸くしました。ここでは1教室あたりの平均児童数が約100人。高学年になるほど学校に来なくなる子が増え、7年生までに男子は3割強、女子は2割にまで減ってしまいます。つまり低学年の教室では、平均以上の数の児童が勉強しているのです。

サヘル・ローズさんと大勢の子どもたちの写真

子どもたちと交流するサヘルさん=ケントーミ初等教育校で2024年2月19日撮影

「決して勉強をあきらめないで」

サヘルさんは「みなさんを見ていると、自分の小さい頃を思い出します」とにこやかに語りかけました。「私は戦争で両親と12人のきょうだいをなくし、8歳まで孤児院で育ちました。本当の名前も誕生日も分かりません。みなさんの中にも私と同じような人がいるかもしれませんね。私は出会った人たちに支えられ、教育を受けて大人になり、みなさんに会いに来ることができました。みなさんもどうか学校に来てください。もし誰かに悪口を言われても『自分はだめだ』なんて考えないで。決して勉強をあきらめないで。教育は必ずあなたを強くしてくれます」。そして子どもたちの目を見ながら、ひとり一人に4冊のノートと鉛筆、ペンを手渡しました。

たった4冊のノートと2本の鉛筆やペンが、勉強を続ける助けになるのだろうか。そう思う人もいるかもしれません。この一帯の学校では教科書が足りず、子どもたちは教科書の内容をノートに写して勉強します。このためノートを「ブック(本)」と呼びます。ノートがないと勉強についていくのは難しく、ドロップアウトの一因になっているのです。配られたノートを胸に抱いて、うれしそうに笑う子どもたちの姿が見られました。

新しいノートと使用する子供たちの写真

新しいノートをもらい笑顔を見せる子どもたち=モンバサ初等教育校で2024年2月21日

教室でも校庭でも、たくさんの子どもたちに囲まれたサヘルさん。ある女の子に「ノートをもらってどんな気持ち?」と尋ねると、「とてもうれしい。これで勉強ができるから。お母さんにもブックをもらったって言うわ。お母さんもとても喜んでくれると思う」という答えが返ってきました。

学用品や靴が買えない暮らし

ウガンダでは、難民は50メートル×100メートルの土地と、国連世界食糧計画(WFP)からの支給金(月額1人当たり1万2,000~2万4,000ウガンダシリング=約500~1,000円)を受け取ることができます。しかし、食べていくにはとても足りません。ホイマの町中の屋台では、ロレックスと呼ばれる薄いお好み焼きのような庶民の好物が売られています。私たちも買って夕食にしましたが、それは1人分が2,000ウガンダシリング(約80円)です。貧困のために難民の子どもたちは家事手伝いだけでなく、水汲みや畑仕事などの賃金労働を担い、学用品が買えないために教育を断念してしまうのです。

サヘルさんは子どもたちの様子を静かに観察していました。「靴をはいていない裸足の子がたくさんいます。破れたり、汚れたりした服の子も多い。学校に通って来るだけでも大変なはずです。学びたいという気持ちを誰かが応援してあげなければ」。

(つづく)

AARは2月19日からの数日間に、難民居住区とその周辺地域の初等教育校2校の2,300人、中等教育校の118人に計9,900冊のノートと5,938本のペン・鉛筆を配付しました。今後も学用品の配付を続けていきます。購入費用の一部は、AARが販売するチャリティチョコの売り上げの利益が充てられています。

<チャリティチョコレート・ウガンダキャンペーン>
https://aar-charity.shop-pro.jp/?pid=159657037

<3月31日(日)開催 イベント サヘル・ローズさんが出会った『ウガンダ・難民キャンプの子どもたち』@東京/オンライン>
https://aarjapan.gr.jp/event/13716/

太田 阿利佐OHTA Arisa

全国紙記者を経て、2022年6月からAAR東京事務局で広報業務を担当。

関連したレポート・ブログを読む

活動レポートTOP

すべての種類のレポート・ブログを見る

もくじ お探しのページはこちらから ページ
TOP