活動レポート Report

国際地雷デーに寄せて:アフガニスタンでの取り組み

2024年4月3日

4月4日は「国際地雷デー」(地雷に関する啓発および地雷対策支援のための国際デー)。AAR Japan[難民を助ける会]は長年にわたって、世界の紛争経験国・地域の地雷問題に取り組んできました。アフガニスタンでは1999年以降、英国の協力団体ヘイロー・トラスト(THE HALO TRUST)と連携して地雷除去事業を実施するとともに、2003年からは地雷の被害を防ぐ「回避教育」に取り組んでいます。東京事務局でアフガニスタン事業を担当する鶴岡友美、地雷事業担当の紺野誠二が報告します。

「地雷の危険性など知りませんでした」:回避教育

「地雷の被害を防ぐなんて考えたこともありませんでした。地雷の危険性も、自分が暮らす地域にそんな危ないものが残されていることも、私たちは知らされていなかったのです」。

アフガニスタン南東に位置するザブール県の羊飼い、オマール・カーンさん(25歳)は、AARの現地スタッフに語り始めました。5年前、いつものように村で羊を放牧していた時に、たまたま埋められていた地雷を踏んだと言います。カーンさんは郡病院で応急措置を受けた後、医療設備が整っている隣国パキスタンの病院に搬送されましたが、右脚を失って自分で歩くことが難しくなりました。

二人の男性が座っている

オマーン・カーンさん(右)に話を聞くAARカブール事務所職員=アフガニスタン・サブール県で2024年1月22日

ザブール県では、これまで地雷を含む爆発物のリスクを伝える回避教育が行われたことはありませんでした。同県は、治安の問題でNGOなどの支援団体は活動ができにくい状況が続いていました。2021年8月にタリバン暫定政権が実権を握って以降、アフガニスタン全土の治安自体は落ち着き、AARもこうした地域に支援を届けることができるようになりました 。

AAR現地スタッフは、首都カブールからザブール県に出張して村々を巡回し、子どもたちを集めて、地雷や不発弾など今も身近にある戦争残留物の危険性とその回避の仕方について講習会を開いています。これまで回避教育を受けたことがないため、他地域と比べて、地雷の危険性をよく理解していない子どもが多いのが実情です。

講習会では、すごろくやカードなどのゲームを取り入れながら、「村人が入らない野原では遊ばないこと」「見慣れない物を見付けた時は触りたくなるけれど決して触らないように」「おかしいと思ったら、すぐに大人に知らせよう」と説明します。また、村ごとに責任者を任命して研修を行い、村人の相談に乗ったり、地雷対応の政府機関に連絡したりする役割を担う人材の育成にも努めています。

現地スタッフの話を聞く子どもたち

子どもたちを対象にした講習会で地雷の危険性を伝える現地スタッフ=サブール県

「AARが行っている講習会は、とても大切で有意義なものだと思います。正しい知識を持っていれば、子どもたちは決して触ったりせず責任者に報告するでしょうし、私もそうしたはずです」。5年前に片脚を失ったカーンさんは話します。落ちている金属片などを興味本位で触ってしまいがちな子どもは、特に高いリスクにさらされており、少しでも多くの子どもや若者たちに回避教育を行う必要性を改めて感じます。

「恐怖から解放されました」:地雷除去

除去活動を行う作業員

手作業で除去活動を行うヘイロー・トラストの作業員=ロガール県

AARは地雷除去を専門とする英国の協力団体ヘイロー・トラストを通じて、不発弾除去活動を支援しています。2023年度に除去活動を行ったのは、首都カブールから約80キロ南に位置するロガール県バラキ・バラック村近郊。ここは国連の国際治安支援部隊(ISAF)が2014年まで駐屯した前方作戦基地に隣接しており、武装勢力によるロケット攻撃を頻繁に受けたため、「ロケット・シティ」と呼ばれていました。

基地の周辺に着弾したロケット弾や砲弾の一部が不発弾となったまま放置され、地域住民は10年を経た今も危険にさらされています。危険を冒して砲弾の鉄くずを拾い集め、それを売って現金収入を得ている人たちはアフガニスタンに多数います。そうしなければ生活できない厳しい現実があるのです。

ヘイロー・トラストは2023年7月から6カ月間、AARの資金を活用して不発弾の除去作業を実施しました。専門の訓練を受けた除去作業員の手作業によって、75万4,754平方メートル(テニスコート2,903面分)のエリアで不発弾126個を除去し、ここを安全な土地に変えました。それが大きな危険を伴い、とてつもない忍耐を要する作業であることは言うまでもありません。

男性が話している

「恐怖から解放された」と話すモハマド・ワリさん=ロガール県

「支援部隊が撤退した後、ここで養鶏を営んでいます。周辺の所有地で農業を始めたいと思っていましたが、開墾作業をしていた従業員3人が不発弾の事故に遭い、そのうち2人が亡くなりました。この3年間だけで牧畜をしていた村人が9人も犠牲になっており、怖くて近付くことができませんでした」と、地元のモハマド・ワリさんは話します。

「こうして土地を安全にしてくれたおかげで、日々の恐怖から解放されました。他の住民たちも、ここに温室を作ったり、農業を始めたりする計画を立てています。日本の皆さんの支援に心から感謝しています」。

アフガニスタンだけでなく、ロシアの軍事侵攻が続くウクライナなど世界各地で地雷・不発弾の被害はなくなっていません。地雷の犠牲者をこれ以上出さないために、AARは地雷除去の支援や回避教育、被害者支援に引き続き取り組んでまいります。AARの地雷対策へのご理解・ご協力を重ねてお願い申し上げます。

鶴岡の写真

鶴岡友美(TSURUOKA Yumi)民間企業勤務を経て青年海外協力隊に参加。国際開発・公衆衛生の分野で修士号を取得後、政府系および民間の途上国開発援助団体に勤務。2019年AAR入職、アフガニスタン事業担当。

紺野誠二(KONNO Seiji)AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は地雷問題やパキスタン事業を担当。

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