活動レポート Report

台湾東部地震の被災地・花蓮県に入りました

2024年4月8日(2024年4月11日更新)

台湾東部沖で4月3日に起きた地震では、花蓮県を中心に多数の建物が倒壊し、これまでに死者13人、負傷者1,100人超の被害が確認され、なお行方不明者の捜索が続いています。AAR Japan[難民を助ける会]の緊急支援チームは7日朝、花蓮県に入り、現地協力団体「基督教芥菜種會」(The Mustard Seed Mission:MSM/本部:台北)とともに被害状況を確認するとともに支援活動を開始しました。東京事務局の中坪央暁が現地から報告します。

傾いたビルの写真

地震で大きく傾いた花蓮市街中心部の9階建てビル=台湾花蓮県で2024年4月7日

人口30万人余りの花蓮県の県都・花蓮市。市街中心部にある9階建ての「天王星ビル」は地震で大きく傾き、倒壊の恐れがあるため重機による解体作業が始まっています。この震災を象徴する光景として、日本のメディアでも繰り返し報じられた現場です。100メートルほど離れた路上には仮設テントの「メディア村」が設けられ、地元テレビなどのカメラがずらりと並んで、ちょうどヘルメット姿の女性レポーターがカメラの前で中継をしていました。

3人の女声が話している

損壊したビルから救出された女性(右)に話を聞く現地協力団体のスタッフ

「激しい揺れが延々と続いて、生きた心地がしませんでした。思わず『神様、助けて!』と叫びました」。この建物の最上階に住んでいた女性(67歳)は振り返ります。朝8時前の発生だったため、同居する夫と娘に加え、4階には息子夫婦と孫がいましたが、「私たちは9階からクレーン車で救出され、息子たちも窓から助け出されて全員無事でした」。

しかし、住民1人がビルの下敷きになって亡くなり、「ここに住んで10年以上、住民はみんな顔見知り。こんなことになってしまって残念でなりません」。震災後はひとまず市内の避難所に身を寄せていますが、「今はまだ、この先どうするか考えられる状況ではない」と言います。

崩壊しかけているビル

1階部分が潰れて立ち入り禁止になった花蓮市内の建物

今回の地震では花蓮県を中心に800件以上の建物が損壊しましたが、花蓮市内を見る限り、大きなビルの崩落は4件ほどに留まり、「幸い電力や通信は止まらず、断水もなかった」とのことで、市民生活は発生から4日経っておおむね正常化しています。他方で台湾有数の観光名所「太魯閣渓谷」では大規模な土砂崩れで一時400人以上が孤立状態になったほか、台北と花蓮を結ぶ幹線道路は今も不通のままです。

食料を配給している

花蓮市街中心部の小学校の体育館に設けられた避難所の食料配給コーナー

鉄道は通常通り運行されているため、私たちは台北駅から朝6時過ぎの特急列車で約2時間かけて、小雨の降る花蓮市に着きましたが、約6時間の滞在中に4~5回余震の揺れを感じるなど大地震の余波は続いています。

7日時点で花蓮市内の避難所は4カ所。このうち中心部の中華國民小学校の体育館には最大時200人以上が身を寄せ、その人数は日々減少しているものの、花蓮市当局の弁当やパン、飲料水などの食料配給コーナー、地元NGOの物資提供や相談窓口ブースを利用する避難者は少なくありません。

昼食を取っていた高齢の女性は「大変な目に遭ったが、皆が親身になって助けてくれて本当にありがたい」と話します。また、支援物資をトラックで運ぶ台湾軍部隊の作業風景も見られ、官民が結束して迅速に危機に対応していることが分かります。

男性が段ボール箱を運んでいる

花蓮市内の避難所で支援物資を運ぶ台湾軍兵士たち

今年1月に起きた能登半島地震では、台湾からも応援のメッセージとともに多くのご寄付が寄せられ、日本と台湾双方の市民の強いきずなが改めて認識されました。今度は私たちが台湾の人々の思いに応える時です。AARの台湾東部地震緊急支援へのご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

ご支援のお願い

台湾東部地震緊急支援へのご寄付は必要額に達しました。
ご協力に心より感謝申し上げます。これまでにお寄せいただきましたご寄付で活動を継続いたします。(2024年4月11日更新)

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※ご寄付の使途で「その他」をお選びいただき、備考欄に「緊急支援」とご記入いただければ、次の緊急支援に活用いたします。迅速な出動のために、ご協力をお願いいたします。
※AARは東京都により認定NPO法人として認定されており、
ご寄付は寄付金控除の対象となります。

中坪 央暁NAKATSUBO Hiroaki東京事務局兼関西担当

全国紙の海外特派員・編集デスクを経て、国際協力機構(JICA)の派遣でアジア・アフリカの紛争復興・平和構築の現場を継続取材。2017年AAR入職、バングラデシュ・コックスバザール駐在としてロヒンギャ難民支援に約2年間携わる。著書『ロヒンギャ難民100万人の衝撃』、共著『緊急人道支援の世紀』、共訳『世界の先住民族~危機にたつ人びと』ほか。

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