活動レポート Report

「日本からの支援ありがとう」:台湾東部地震

2024年4月9日(2024年4月11日更新)

4月3日の台湾東部地震で大きな被害を受けた花蓮県で、AAR Japan[難民を助ける会]の緊急支援チームは現地協力団体「基督教芥菜種會」(The Mustard Seed Mission:MSM/本部:台北市)とともに、物資配付などの緊急支援を開始しました。今後はMSMを通じて被災者支援を本格化します。東京事務局の中坪央暁が現地から報告します。

AARスタッフなど5名が話している

MSM災害対応チームから被災地の最新状況を聞く(右から)AARの岡山典靖、栁田純子
=台湾・花蓮市内のMSM活動センターで2024年4月7日

「住んでいたアパートは無事だったけれど、余震が怖くてとても帰れません」。普段はワークショップや職業訓練などに使われている花蓮市内のMSM活動センターで、シングルマザーの女性(48歳)は不安を隠せない様子で訴えました。12歳と11歳の息子たちは2人とも発達障害などがあり、地震のようにいつもと違う状況に置かれると、感情がコントロールできなくなると言います。

母子3人は現在、避難所になっているMSMの宿泊施設に身を寄せています。女性は子どもたちの世話をする傍ら、地元ホテルの清掃係として働いていますが、今回の事態で観光客が来なくなり、「このまま仕事を失ってしまうのではないか」と表情を曇らせます。花蓮では複数あった避難所が早々と閉鎖・縮小に向かっていますが、この女性のように精神的に強いショックを受けて、自宅に戻りたがらない被災者も少なくありません。

段ボール箱を受け取った女性とAARスタッフ

被災者の女性に支援物資を手渡すAARの栁田純子(左)=花蓮市内のMSM宿泊施設

現地団体と連携した被災者支援

AARの現地協力団体MSMは、1952年にキリスト教の精神に基づく社会奉仕活動を開始し、台湾各地に拠点を置いて子どもや高齢者、先住民族など社会的に弱い立場に置かれやすい人々への支援を実施するとともに、災害時の緊急支援や防災・減災に取り組んできた実績があります。AARはキリスト教など特定の宗教を背景とするNGOではありませんが、今回は信頼できる現地団体としてMSMと連携することになりました。

列車の客室に物資が積まれている

地震発生の2日後、花蓮県に向かう道路が通行止めになり、列車で支援物資を運ぶMSMスタッフ
=MSM撮影

AARは早速、女性に食料や衛生用品の詰め合わせを届けました。AARチームの栁田純子が話しかけながら箱を手渡すと、女性は何度もうなずいて受け取り、少し安心した様子で、日本語で「ありがと」と微笑みました。何かをもらったことよりも、誰かが気にかけてくれているという実感が、震災後の不安の中にある人々にとって少なからぬ意味を持つように思います。

被災地では緊急支援物資の配付が既にピークを超えつつありますが、これで支援が充分に行き渡った訳ではありません。MSMで台湾東部の災害対応を統括する呉雅琴マネージャーは、次の段階として「この女性のような問題を抱える被災者に対して、専門家による心理的サポート、新しい住居を探す手伝いなど、個々人の状況に合わせて生活再建に向けた支援を進める方針です」と話します。

重機が作業している

崖崩れで寸断された台湾有数の観光名所「太魯閣渓谷」の道路。花蓮市側から数キロ入った地点で通行止めになっていた=4月8日

また、MSMは発生直後から先住民族の人々が暮らす山間部の集落にもチームを派遣して支援物資を届けるとともに、どんな課題があるか聞き取り調査しています。「市街地でも山村でも、建物自体の全半壊には至っていないものの、家の中が滅茶苦茶になったり、水回りなど何らかの修繕が必要だったりする家が多数あります」と呉マネージャー。

AARチームの岡山典靖はMSM側との協議の結果、「状況を熟知したMSMに日本の皆さんのご寄付を託し、被災家屋の改修、心理的サポート、先住民族など支援が届きにくい人々への対応に活用してもらいたいと考えます」。AARは常時MSMとやり取りを続けて、支援活動を丁寧にフォローしていきます。

物資を受け取った女性とスタッフが話をしている

震災翌日に花蓮県の山間部にある先住民族の集落を訪ねたMSMチーム=MSM撮影

初めて日本のNGOと連携するMSMの呉マネージャーは、「台湾が困難な状況にある今、日本から届いた温かいご支援は私たちの友情の証です。AARとの協働に感謝するとともに、日本の皆さんからいただいたご寄付を確実に被災者のために役立てていくことをお約束します」とメッセージを寄せてくれました。

今年1月に起きた能登半島地震に際しては、台湾からも多くのご寄付が寄せられ、日本と台湾双方の市民の強いきずなが改めて認識されました。今度は私たちが台湾の人々の思いに応える時だと考えます。AARの台湾東部地震緊急支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

ご支援のお願い

台湾東部地震緊急支援へのご寄付は必要額に達しました。
ご協力に心より感謝申し上げます。これまでにお寄せいただきましたご寄付で活動を継続いたします。(2024年4月11日更新)

ご寄付はこちら

※ご寄付の使途で「その他」をお選びいただき、備考欄に「緊急支援」とご記入いただければ、次の緊急支援に活用いたします。迅速な出動のために、ご協力をお願いいたします。
※AARは東京都により認定NPO法人として認定されており、
ご寄付は寄付金控除の対象となります。

中坪 央暁NAKATSUBO Hiroaki東京事務局兼関西担当

全国紙の海外特派員・編集デスクを経て、国際協力機構(JICA)の派遣でアジア・アフリカの紛争復興・平和構築の現場を継続取材。2017年AAR入職、バングラデシュ・コックスバザール駐在としてロヒンギャ難民支援に約2年間携わる。著書『ロヒンギャ難民100万人の衝撃』、共著『緊急人道支援の世紀』、共訳『世界の先住民族~危機にたつ人びと』ほか。

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