活動レポート Report

危機の終息が見えない中で:ウクライナ南部避難民支援

2024年5月14日

ロシアによる軍事侵攻が3年目に入ったウクライナでは、事態が終息するどころか、南東部の戦闘、全土のインフラ施設へのミサイル攻撃がさらに激化し、人道危機は依然として深刻な状況にあります。AAR Japan[難民を助ける会]は2023年10月以降、現地協力団体「The Tenth of April」(TTA/本部オデーサ)とともに同国南部ミコライウ、ケルソン両州の国内避難民への支援を続けています。AARキシナウ事務所(モルドバ)のシュクル・バイデラが報告します。

ナターシャさん一家の写真

支援物資を受け取ったナターシャさん(左奥)の家族 =ウクライナ南部ミコライウ州の療養施設で2023年12月

ウクライナ危機では、ドイツやポーランドなど周辺国に滞在する難民が約650万人、国内に留まる避難民が約370万人に上り、人口の4分の1が住み慣れた家や町を離れて避難生活を余儀なくされています。ロシア軍が攻勢を強める中、今年3月には600人余りの民間人が死傷したとされ、ミコライウ、ケルソン両州は特に大きな影響を受けています。

AARとTTAは両州に滞在する国内避難民および地域住民のうち、家を失った人や高齢者、障がい者世帯を優先して、これまでに643人に生活支援の現金を給付したほか、233世帯に食料や衣類、衛生用品などを届けました。その後の聞き取り調査によると、給付した現金は主に冬場の暖房や電気など水光熱費に活用され、持病の治療や家屋の修繕、食料購入などに生かされています。

ミコライウ州都ミコライウ市の療養施設に仮住まいしているナターシャさん(44歳)は、24~5歳の娘5人、息子2人を持つシングルマザー。黒海に面した同州の町オチャコフに住んでいましたが、「毎日のように攻撃があり、砲撃を受けて家が壊されました。その時ひとり家にいた84歳の母も幸い無事で、その後は家族で親戚や友人宅を転々としました」。しかし、どの家も避難者でいっぱいだったため、昨年12月に街を離れざるを得なかったといいます。

物資配布の様子

ミコライウ州の住民に支援物資を手渡すTTAスタッフ=2024年1月

ナターシャさんは「この先、家族で安心して過ごせる場所を見付けられるかどうか……。それに子どもたちの教育も心配です。オンライン授業が行われているのですが、私たちは古いスマホしか持っていないので、満足に勉強させることもできません」。その一方で「日本の皆さんが私たちのことを気にかけてくださっていると知って温かい気持ちになりました。ご支援に感謝します」と話しました。

被害を受けた親子の写真

攻撃で破壊されたケルソン州タヴリースク村で暮らす親子=2024年3月

武力衝突や大災害による人道危機が相次ぐ中、ウクライナ問題への関心は薄れつつあります。国際社会の「ウクライナ疲れ」につけ込むように、ロシアは近く大規模な攻勢に出るとの報道もあります。長引く戦禍の下、ウクライナの多くの人々がひたすら耐え続けていることを、私たちは忘れてはならないと思います。

避難民のインタビューの様子

避難民の女性に話を聞くAARのシュクル・バイデラ(左)=2024年1月

物資配布手配の様子

ミコライウ州リマニー村で物資配付の手続きをするTTAスタッフ=2024年1月

引き続き、AARのウクライナ人道支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

シュクル・バイデラキシナウ事務所

トルコ出身。2015年AAR入職、シリア難民支援に携わる。2022年2月のウクライナ人道危機の発生以降、隣国モルドバを拠点に難民・国内避難民支援に従事し、ウクライナ南部を度々訪問している。

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