活動レポート Report

モロッコ地震 復興に向けて歩き始めた人々

2024年6月24日

2023年9月に北アフリカのモロッコ中部で発生した大地震から約9カ月。
約3,000人が犠牲になった震災では、30万人以上が被災し、現在も多くの人々がテントでの避難生活を余儀なくされています。AAR Japan[難民を助ける会]は、現地協力団体とともに支援物資の配付など支援活動を続け、これまでに約1万9,000人の被災者に支援を届けました。復興に向けて歩き始めた人々の声を東京事務局の八木純二が報告します。

AAR職員にはなす被災者男性

AARの長野峻典(左)に被災地の現状を話すモハメドさん(右)=モロッコ中部アルホウズ州アムゾグニ村で2024年6月4日

「政府からの支給は滞りがちです。仕事もなくなって、生活はとても苦しく、日々の食事にも困っています」。幹線道路から外れて山道を1時間ほど進んだ山奥にあるアムゾグニ村で、モハメドさんは窮状を訴えました。

震災で集落は壊滅し、村人は急峻な斜面に支給されたテントを建てて暮らしています。被災者は政府から月額2,500ディルハム(約4万円)の支給を受けていますが、とても充分ではなく、支給も滞りがちだといいます。

被災者のインタビューの通訳を買って出てくれたムハマンドさん(17歳)は、「この地域の暮らしは本当に大変なんだ」と話します。ITエンジニアを目指しているムハマンドさんは地震前、この地域の中心地アスニ地区にある寄宿舎から高校に通っていました。しかし、地震で寄宿舎が損壊し、生徒たちはマラケシュの寄宿舎に移ったものの、ムハマンドさんは大都市の生活が合わず、勉学を中断して生まれ故郷に戻っています。

モロッコ被災地地図

アトラス山脈の山間部に住む人々は、観光業と農業で生計を立てており、もともと経済的に貧しい地域です。AARは現地団体「アミス・デ・エコル(以下アミス)」と連携して、被害の大きかった山間部の村々で、食料や飲料水、衛生用品などの物資配付とトイレの建設を行ってきました。

特に衛生状態の悪化が懸念される中、震災後はトイレの設置が急がれました。アミスは地元の建設資材業者のラジド・ラムジさんと協力して、被災地に鉄筋コンクリートのトイレを95基建設しました。アミス職員のマジドさんは「ラジドさんは地域の復興のために破格で資材を提供してくれただけでなく、トラックを手配したり、運送を渋る運転手を説得したりして全面的に協力してくれました。彼の店先は支援関係者の情報交換の場にもなっています」。

建設資材の店先の店主の男性

地域の復興に尽力するラジド・ラムジさん=アルホウズ州テレトニアコブ地区で

建設したトイレは衛生面や耐久性が考慮されています。自身も被災したものの、トイレの建設と普及に協力した住民のアブダラティフ・ブディさんは、「地震の後、トイレができるまでは屋外で用を足さざるを得なかった。このトイレは丈夫で安全だし、水洗式で衛生的です」。

トイレについてAAR職員に説明する男性

AAR長野(右)にトイレの使用状況を説明するアブダラティフ・ブディさん(中央)=アルホウズ州ティムリト村で

女子寄宿舎に図書を寄贈

AARとアミスは、アスニ地区から移った生徒たちが生活するマラケシュの女子寄宿舎に1,135冊の図書を寄贈しました。生徒たちは「日本の皆さん、本当にありがとうございます。いただいた本で勉強したり、余暇に小説を読んだりしています」。彼女たちはマラケシュでの寄宿生活になじみながらも、「故郷の村に近くて、友人も多いアスニ地区での生活が恋しい」と話します。

配架された本の前の3人の生徒(女性)

AARとアミスが提供した図書の前でインタビューに答える生徒たち=マラケシュ市で6月7日

アミスは生徒や地域の人々の寄宿舎再建の要望を受けて、アスニ地区に新しい寄宿舎を再建する計画で、モロッコ教育省と契約を交わして建設を開始したところです。

がれきの撤去作業

新しい寄宿舎を建設するために始まったがれきの撤去作業=アルホウズ州アスニ地区で

モロッコ地震の被災地では、道路の改修などが進む一方、山間部では多くの被災者が今なお厳しい生活を強いられています。それでも、人々は故郷の復興を信じて、生活再建の歩みを始めています。日本の皆さまから寄せられたご寄付を、引き続き被災地の再建に生かしてまいります。

再建中の自宅前に立つ男性

再建中の自宅前に立つムハマンドさん。「寄宿舎ができたら早く高校に戻りたい」=アルホウズ州テレトニアコブで6月4日

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