活動レポート Report

能登半島地震から半年:被災地の人々とともに

2024年6月28日

家屋が倒壊した町を3人の子どもが歩いている

家屋が倒壊したままの住宅地を歩く子どもたち=石川県輪島市で2024年4月

年明けに発生した能登半島地震から半年が経ちます。石川県を中心に281人(災害関連死を含む)が亡くなった被災地では、インフラの復旧や仮設住宅への入居が進む一方、今も約2,200人が避難所生活を余儀なくされています。震災発生直後から現場で支援活動に取り組むAAR Japan[難民を助ける会]東京事務局・国内災害チームの生田目充が報告します。

緊急期を過ぎて新たな課題

1月1日夕の震災発生後、私(生田目)が被災地に入ったのは2日後の1月3日。隣の富山県高岡市から車で6時間かけて到着した石川県珠洲市内は、無数の建物が倒壊し、停電と断水が続く中、多くの被災者の皆さんが避難所にあふれていました。

男性が女性に話を聞いている

輪島市港コミュニティセンターに避難している女性に話を聞くAAR生田目充=石川県輪島市で2024年1月

AARは協力団体と連携して避難所で炊き出しを開始するとともに、障がい福祉施設を回って被害状況を聞き取り、ペットボトル飲料水や食料、衛生用品などを届けました。AARは災害時、最も困難な状況に置かれがちな障がい者の支援を最優先しています。施設職員の皆さんは自ら被災しながらも、施設利用者のために避難所から通勤して来る方々もいました。

緊急支援活動は多くの企業・団体との連携で実施されました。断水が長引いたこともあり、企業から寄贈された水の要らないシャンプーや歯ブラシ、体を拭くウェットシート、携帯トイレは福祉施設や避難所でたいへん喜ばれました。レトルト食品や飲料、菓子、農園から直送された野菜や果物も炊き出しなどに活用し、被災者の皆さんを励ましました。

これまでの支援実績の表。炊き出し数や物資配付の受益者数などが記載されている。

あれから半年が経った今、ほとんどの地域で断水が解消され、仮設住宅の建設も進んで、避難所での炊き出しは大幅に減っています。その一方で、自宅が「準半壊」「一部損壊」と判定されたため仮設住宅に入居できなかったり、損壊家屋の公費解体が進まずに生活再建のステップに移れなかったり、緊急期を過ぎて多くの課題が顕在化しています。

障がい者が直面する問題は

石川県内の多くの福祉施設では、建物や設備の損壊、施設利用者や職員自身の被災に加えて、福祉作業所の仕事(食品加工・部品組み立て・リサイクルなど)が激減してしまい、障がい者が地域で働くための就労支援が困難になっています。また、震災をきっかけとして、これまで公的な福祉サービスを利用できずに在宅のまま孤立していた障がい者の存在が明らかになるなど、被災地の復興から障がい者が取り残されかねない状況があります。

ラオス人とベトナム人の技能実習生にタイ米を手渡すAAR櫻井佑樹=富山県氷見市で2024年3月

今回の震災では、能登地方で漁業に携わる技能実習生のインドネシア人など、外国人居住者支援も課題になっています。AARは平素から外国人支援に取り組む地元団体と連携し、言葉や習慣の違いから行政の情報や避難所にアクセスできずにいる外国人に食料や衛生用品、暖房用燃料などを届けると同時に、困りごとを聞き取って関連団体や自治体につなげました。

「より良い復興」目指して

AARは現在、石川県七尾市・和倉温泉の一角に活動拠点を置いて、仮設住宅入居者への家電提供、被災者支援制度の申請サポート、傾聴・マッサージなどの支援に取り組んでいます。

公費の対象外となる家電を提供している志賀町、中能登町の仮設住宅では、仮設住宅内の集会所・談話室に備品類を提供し、住民同士が支え合うコミュニティ形成をサポートする予定です。これには、AARが今も続ける東日本大震災(2011年)の被災地支援を通じて得られた教訓が生かされています。

机を囲んで座る人々

日本障害フォーラム(JDF)主催の「視覚障がい者が能登半島地震について語る会」=石川県七尾市で2024年6月

障がい者支援では、日本障害フォーラム(JDF)が開設した「能登半島地震支援センター」(七尾市)と連携し、福祉施設の復旧・再開支援と障がい者の個別支援を進めます。6月20日に同センターが主催した「視覚障がい者が能登半島地震について語る会」には、視覚障がい当事者のAAR職員が参加し、和倉温泉で働く視覚障がいのあるマッサージ師などが直面する問題について意見交換し、新たな支援を検討しています。

外国人居住者支援については、地域住民との意思疎通を円滑にするための「日本語教室」の拡充を計画中です。能登地域の日本語教育コーディネーターと協力し、これまで日本語教師が手弁当で準備していた学習教材を提供したほか、外国人向けの防災イベントを開催するなど、日本語教室を中心に外国人の防災ネットワークづくりを進めます。

2015年に仙台市で開催された第3回「国連防災世界会議」で採択された「仙台防災枠組」では、復旧・復興段階において「ビルド・バック・ベター(より良い復興)」を実践することが謳われています。AARはこれまで積み上げてきた被災地支援・障がい者支援の知見を生かして、地域の復興・再生に取り組む奥能登の皆さんと引き続き連携してまいります。

AARの能登半島地震被災地支援へのご理解・ご協力を重ねてお願い申し上げます。

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生田目 充NAMATAME MitsuruAAR東京事務局支援事業部

2016年AAR入職。ミャンマー事務所、タジキスタン事務所駐在を経て、2017年より東京事務局で国内災害支援を担当。台風15号・19号(2019年)、新型コロナウイルス(2020年)、2023年7月豪雨などの緊急支援に従事。

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