スーダンで2023年4月に発生した国軍と準軍事組織(RSF)の武力衝突では、これまでに1万人以上が犠牲になり、1,000万人以上が難民・国内避難民となっています。AAR Japan[難民を助ける会]は、このうち国内避難民に食料や衛生用品など配付する緊急支援を実施しています。スーダン事業担当の相波優太が報告します。
スーダンの首都ハルツームで2023年4月15日に勃発した大規模な武力衝突は、その後、西部ダルフール地方や南部の州にも拡大し、現在も国内各地で戦闘が続いています。現地では食料不足や治安の悪化が深刻化しており、人口の半分以上にあたる2,600万人超の人々が食料不足に直面しています。また、戦闘地域では略奪や性暴力がまん延するなど、その惨状は「世界最大の避難民危機」と呼ばれています※。
AARは7月4~16日、スーダン東部カッサラ州の8カ所の避難所で、食料詰め合わせや衛生用品、生活用品を配付する緊急支援を行いました。これまでに、主食となる小麦粉、コメ、レンズ豆、調理用油などのパッケージを451世帯2,400人に、水汲みや洗濯に使うバケツやタライのほか、石けんや生理用ナプキンなどの衛生用品を含む生活必需品を86世帯454人に届けました。
AARは当初、ハルツーム州の南に隣接するジャジーラ州で緊急支援を計画しており、人道支援委員会や他団体と調整してAARの事務所を設置するところまで準備を進めていました。しかし、昨年12月にRSFによって占領されたため、同州での活動をあきらめ、カッサラ州を新たな活動地とした経緯があります。
その後AARは現地NGOと連携して、スーダン政府の人道支援委員会などと調整を重ね、物資配付を行う避難所8カ所を選定しました。これらの避難所には、女性が世帯主の世帯や障がい者世帯、慢性疾患を抱える家族がいる世帯、高齢者世帯など、特に弱い立場にある人々が少なくありません。また、他団体からの支援も届いておらず、避難所全体で食料や日用品が慢性的に不足している状況でした。
夫と5人の子どもとともにハルツームで暮らしていたアミラさん(43歳)は、武力衝突勃発から3週間後に東に隣接する州に避難しました。「この辺りでは以前から軍事政権に対するデモが繰り返し起きていました。だから、最初はいつものデモが少し激しくなっただけだと思っていました」とアミラさんは話します。
アミラさんの娘は小児まひのため、車いすを使って生活しています。「徐々に戦闘が激化して、銃声や爆撃音が頻繁に聞こえるようになり、娘は恐怖に耐えられなくなってきました。子どもたちの安全のために、私たち家族は家を離れ、避難せざるを得ませんでした」。最初に避難した場所では小さな家を借りられたものの、4カ月後にそれまでの5倍の家賃を請求されたと言います。
「貯蓄も尽きて、私たちは住む場所を失いました。夫に仕事はなく、私が避難所の近くで洗濯やアイロンの仕事をして得られたわずかな収入で何とか生活しています。避難所での暮らしはひどいものです。床は地面にゴザを敷いただけで、屋根はビニールシートで覆われています。今は雨季で、いつも雨漏りしています」。
AAR現地スタッフから支援を受け取ったアミラさんは、感謝の言葉とともに、ほっとした表情を見せてくれました。「今回の食料配付は私たち一家にとって大きな支えとなりました。最近は飢えを耐え忍ぶしかない日々でした。AARが届けてくれた食料は、向こう2カ月一家が食べるのに困らない量です」。けれども、今後については「子どもたちの安全を考えると、戦闘が続くハルツームに戻ることはできません。少なくとも治安が保たれているこの避難所で、暮らしていくしかないでしょう」と話します。
国軍とRSFの和解に向けた動きは見られず、6月末にはこれまで戦火が広がっていなかった州にまでRSFが侵攻を開始し、数日間で6万人以上が難民・避難民となって国内外に逃れました。こうした深刻な状況が続いているにもかかわらず、スーダンの人道危機は国際社会から注目されていません。
AARは皆さまから寄せられたご支援を確実に届けることで、「スーダンは忘れられていない」というメッセージを困難な状況に置かれた人々に伝えています。引き続き、AARのスーダン国内避難民支援へのご協力をお願い申し上げます。
ご支援のお願い
スーダン緊急支援への
ご協力をよろしくお願い申し上げます。
※ご寄付の使途で「スーダン紛争緊急支援」をお選びください。
※AARは東京都により認定NPO法人として認定されており、
ご寄付は寄付金控除の対象となります。
※ United Nations | Meetings Coverage and Press Releases
※この活動は皆さまからのご寄付に加え、ジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。
相波 優太AIBA Yuta海外駐在員
大学院で平和構築を学んだ後、民間企業でODAを通じた海外のインフラ整備案件に携わる。AAR東京事務局勤務を経て、2023年よりウガンダ駐在