スーダンで2023年4月に発生し、その後も収束の兆しが見えない政府軍と準軍事組織(RSF)の武力衝突によって、治安の悪化や食料不足が深刻化しています。人口の半分以上にあたる2,600万人超が食料不足に直面し、400万人以上の子どもたちが急性栄養失調に陥るなど危機的状況が続いています。AAR Japan[難民を助ける会]が実施している国内避難民支援について、スーダン事業担当の相波優太が報告します。
AARが活動する同国東部カッサラ州には、7月末時点で約24万人の国内避難民が避難しており、その数は増加の一途をたどっています。AARは新たに同州に逃れてきた人々にも物資を提供できるように、政府の人道支援委員会などと調整しながら緊急支援を行っています。7月の物資配付では、小麦粉やコメ、調理用油などの食料パッケージと生活必需品を避難所で暮らす人々に届けました。
2人の子どもの母親であるノウラさん(33歳)は、首都ハルツームで暮らしていました。夫は政府軍の軍人で、昨年4月にRSF側が攻撃を仕掛けた際、真っ先に標的となったのが夫の勤務する軍事施設だったと言います。
「夫は武力衝突が起きてすぐに負傷しました。一命は取り留めたものの、長期入院をせざるを得ないほどの重傷でした。それからずっと、夫が亡くなってしまうのではないかという恐怖で頭がいっぱいです」とノウラさんは話します。
戦闘は日に日に激化し、ノウラさん家族が暮らす地域にも広がってきました。爆撃音や軍用機の爆音が鳴り響くようになり、子どもたちは恐怖に震えていたと言います。近隣のパン屋や食料品店が閉まって食料が入手できなくなり、水しか口にするものがない生活が数日続いたところで、ノウラさんは幼い子どもたちを連れて避難することを決めました。
「入院している夫を残して逃げるのは、決して簡単な決断ではありませんでした」とノウラさんは話します。「私たちは、とにかく戦地から少しでも離れようと、行くあてもないまま家を出て歩き始めました。子どもを連れて20キロほど歩いたところで、偶然、同じように避難しようとしている人たちと出会い、避難所までトラックの荷台に載せてもらうことができました」。
しかし、安全な場所にたどり着いたと思ったのも束の間、避難先もRSFの攻撃を受け、ノウラさんたちは再度の避難を余儀なくされました。昨年末からは、AARが支援するカッサラ州の避難所で暮らしています。「私たちの家と残してきた大切な物のことを思い出すと、とても悲しくなります。しかし、それらを犠牲にしてでも、私は子どもの安全を選びました。食料だけでなく何もかもが不足していますが、戦地で暮らすことに比べれば今の生活のほうがまだましなのです」。
AAR現地スタッフから支援物資を受け取ったノウラさんは、「今回AARからもらった食料はこれまでのどの支援よりも量が多く、しばらくは食料の心配をせずにすみます。本当に助かりました」と少し安心した表情を見せてくれました。
スーダンの国内避難民は、7月末時点で1,000万人を超え、食料不足から急性栄養不良に陥ったり、持病の症状が悪化したりする人も少なくありません。AARが支援する避難所では障がい者や高齢者など、医療サービスを必要としている人々が多く、治療や薬の処方などの支援も必要です。
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相波 優太AIBA Yuta海外駐在員
大学院で平和構築を学んだ後、民間企業でODAを通じた海外のインフラ整備案件に携わる。AAR東京事務局勤務を経て、2023年よりウガンダ駐在