AAR Japan[難民を助ける会]は、アフリカ南部の内陸国ザンビアで、周辺国から避難してきた難民や元難民(※)を対象とした英語教室を開いています。故郷を離れ、異国の地で暮らす彼らにとって、ザンビアの公用語である英語は地元社会に溶け込み、生活や仕事をするうえで欠かせないスキルです。同国北西部にあるメヘバ難民居住地の活動の様子を、メヘバ事務所の小林鮎実が報告します。
(※)1971年にできたメヘバ難民居住地では、アンゴラやルワンダなど、出身国の情勢が落ち着いた後も母国へ帰らず、居住地に留まることを決めた人たちを「元難民」と呼んでいます。
2023年5月にスタートした英語教室は、メヘバ難民居住地内の2カ所で学校の空き教室やテントを利用して開講しています。自身も難民の講師が指導し、基礎/初級/中級の3つのレベルで、2時間の授業を週3日、6~7カ月間実施します。AARは講師の給与を提供するほか、教室運営にかかる事務全般を担っています。
現在の受講者は64人で、ほとんどがフランス語を公用語とする隣国のコンゴ民主共和国から逃れてきた難民です。小さな店舗の経営や農業で生計を立てている人が多く、英語を身につければ就労機会が増えるほか、英語で書かれた支援情報や広告を読めるようになって選択の幅が広がります。
授業に臨む受講生は真剣そのもので、6人の子どもを育てるシングルマザー、足に障がいがあり松葉杖で通ってくる男性、「孫に勉強を教えたい」と意気込む67歳の女性などが参加しています。教室を自分たちで掃除したり、SNSグループを作って教え合ったり、授業開始の何十分も前に来て復習する姿もよく見かけます。
1歳児おんぶして通う母親も
開講当初から参加するカパタさん(31歳)は14年前、治安が悪化したコンゴから一家で避難してきました。夫とトウモロコシや野菜を育て、居住地内の市場や近隣の町で販売して生計を立てています。「お客から英語で話しかけられた時にうまく返答できず、申し訳なかった」ことから、教室に通い始めました。
5人の子育て中の彼女は、1歳の末っ子をおんぶして参加しています。子どもが泣き出すといったん教室を離れ、泣き止むと再び戻って、講師の話に一生懸命、耳を傾けます。講師もそんなカパタさんの学習が遅れないよう、授業中に何回も当てて理解度を確認したり、クラスが終わった後で個別指導したりして支えています。
基礎コースを修了し、現在は初級コースに通うカパタさん。「ここで英語を学んだおかげで、子どもたちの宿題を見てあげられるようになりました。もっと勉強して、英語が話せない他の難民の人たちを助けられるようになりたい」と話します。
厳しい環境にあって、時間を作って教室に通い続ける受講生のひたむきな姿を見ると、私自身とても勇気づけられます。この英語教室は、個々の受講生たちの生活と人生を変えるだけでなく、コミュニティ全体を支える大きな力となる可能性を秘めています。当地の難民・元難民ひとり一人に寄り添って、支援活動を続けていきたいと思います。
AARの難民支援活動へのご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。
※この活動は皆さまからのご寄付に加え、外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。
小林鮎実KOBAYASHI Ayumiザンビア・メヘバ事務所
大学在学中にボランティアとしてケニア・ウガンダに滞在。民間企業勤務の後、2023年1月AARに入職。ケニア駐在を経て2024年8月よりザンビア・メヘバ駐在