13年間続いた内戦がアサド政権崩壊によって終結したシリアでは、圧政から解放された喜びの声が聞かれる一方、食料価格が高騰するなど混乱も広がっています。AAR Japan[難民を助ける会]は2014年から同国内で支援活動に取り組んできた経験を生かし、現地協力団体と連携して緊急支援の準備を急いでいます。
2011年に始まったシリア内戦では、家を失った約720万人が避難生活を送っているのに加え、約600万人が難民として周辺国などに避難しています。現在、シリアの人々の90%は貧困ライン以下、つまり1日2.15ドル以下で生活しています。
AARは2023年12月~2024年4月、同国北西部の10カ所の避難民キャンプで1,692世帯(8,050人)にパンを届けるプロジェクトを実施しました。聞き取り調査では「AARからパンを受け取るまでの1年半近く、支援は一切なかった。パンを届けてもらって、ひと安心しました」「最低限必要なパンをもらったので、手持ちのおカネで他の食材を家族に買うことができました」などの声が聞かれました。
内戦終結の一方で、現地では食料価格の高騰など混乱が生じています。北西部イドリブ県とアレッポ県では、主食であるパンの価格が11月27日から12月9日までに実に9倍に値上がりしたと伝えられるなど、市民の暮らしを著しく圧迫しています。
今後、国外からシリア国内に戻る人々が増えるとともに、そのような混乱が拡大する可能性もあります。今のところはトルコやレバノン、ヨルダンなど国外からの帰還民は少数にとどまっており、混乱も起きていませんが、UNHCRは、現在近隣国に避難している600万人のうち、来年1月から6月の間に100万人が帰還すると予想しています 。
すでにシリア国内の避難民キャンプを出て、故郷や主要都市に戻る動きも始まっており、医療や教育体制の整備が急務となっています。AARが連携してきた現地団体の担当者は、「基本的な食料や水、生活用品の提供、破壊された住居の再建に加え、独裁政権下で刑務所に収監されていた政治犯を含む人々の心身のケアも必要になる」と訴えます。
また、すでにトルコなど国外で生活の基盤を築き、帰還を望まない人にまで帰還を求める圧力がかかることも懸念されています。国外で長く暮らす、あるシリア出身者は、AAR職員に「子どもは(シリアの公用語である)アラビア語がわからない。どうしたらいいのか」とため息をついていました。
「世界最大級の人道危機」と言われたシリア内戦は終結したものの、人々の困難はこれからも続きます。AARは国内避難民と帰還民への支援の準備を現地団体とともに進めています。シリア緊急支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。
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