活動レポート Report

女子生徒が通学を諦めないために@ケニア

2025年8月27日

ケニア北西部の難民居住地域にある学校の多くは、トイレなどの衛生設備が十分ではなく、子どもたちが安心して学べる環境が整備されていません。また、月経時の衛生用品の不足や月経に対する偏見などから、学校を欠席したり中途退学したりする女子生徒が多くいます。こうした状況を改善するAAR Japan[難民を助ける会]の取り組みについて、元ケニア駐在員の今野聖巳が報告します。

女子寮生徒の集合写真

AARが建設したナショノカ校の女子寮で暮らす子どもたち


事業地のカロベイエ地域

女子寮の衛生環境を改善

カクマ難民キャンプおよび隣接するカロベイエ難民居住区では、南スーダンやソマリアから逃れてきた難民が暮らしています。AARが支援するナショノカ初等校には、難民の子どもやこの地域に住んでいる受け入れコミュニティの子どもたちが通っています。1年生から9年生(おおよそ6歳から18歳)の約1,700人の子どもたちが在籍していますが、家庭の貧困や家が遠いこと、孤児であることなどの理由から、多くの子どもたちが寮生活を送っています。

約80人が生活する女子寮では女子トイレが壊れて使えない状態で、子どもたちは150メートル以上も離れたトイレを使わざるを得ず、暗い夜道を怖がって野外で用を足す子どもたちも少なくありませんでした。また、シャワー室も損壊しており、外から見えないようにする仕切りがない屋外での水浴びを余儀なくされていました。性被害のリスクも高い極めて深刻な状況で、子どもたちが安心して使える衛生的なトイレとシャワーの整備は喫緊の課題でした。

廃墟となったトイレの写真

壊れて使えなくなったトイレ

こうした問題に対応するため、AARは女子寮の近くにトイレとシャワー室を設置することにしました。2025年5月に建設を開始し、8月上旬にトイレ1棟(3室)とシャワー室1棟(4室)が完成しました。頑丈で衛生的なこれらの設備は、学校の夏休み明けの8月下旬から寮に住む女子生徒たちが使う予定です。

新たに建設したトイレの写真

AARが建設したシャワー棟(手前)とトイレ棟(奥)

月経に関する啓発と衛生用品の配付

また、ナショノカ校に通う女子生徒の多くが、月経に関する問題に直面していました。生徒たちは生理用品を買うことができず布切れなどで代用していましたが、衛生面で問題があるだけでなく、月経中に授業を欠席してそのまま通学を諦めるケースが相次いでいました。月経を迎えた女子に対する差別や偏見も根強く残っており、この問題を深刻化させていました。

月経を迎えた女子生徒も安心して学校に通える環境を整えるため、AARは、2025年7月上旬に専門講師を招いて、同校の教員6人を対象とした衛生教育研修を実施しました。教員は、月経や衛生教育に関する基本的な知識に加えて、月経について議論することをタブー視する地域の風潮や、「月経中の女子は学校に行くべきではない」といった誤った認識を正すための教育方法について学びました。

教員が生理用品の使い方を学習している様子

生理用品の基本的な使い方を学ぶ教員

男性教員のボンファス先生は、「これから毎月のワークショップを通して、身につけた知識を子どもたちに教えていきます。特に男子生徒には、月経を迎えた姉妹やクラスメイトに対して冷やかしたり差別したりせず、日常生活で手助けするなど、優しく支える姿勢を教えていきたいです」と語りました。

また、7月中旬には12歳以上の女子生徒600名に対し、洗って繰り返し使用できる布製ナプキンやショーツなどの衛生キットを配付しました。教員たちが布製ナプキンの使い方を説明すると、生徒たちは熱心に聞き入っていました。

布ナプキンの使用法を学ぶ子どもたち

教員の指導のもと布ナプキンの使い方を実演する子どもたち

この事業は2026年3月まで継続する予定で、今後は研修を受けた教員たちが中心となって生徒に対する衛生啓発ワークショップを毎月行い、月経や健康・衛生に関する正しい知識を伝えていきます。エドワード校長は「衛生環境が改善され、特に女子生徒の就学継続率が改善することを目指しています。子どもたちが身につける知識やスキルは、生涯にわたって彼らを守ってくれる財産となります。学力の向上だけでなく、健康的な生活を送ることができるようサポートしていきたいです」と話しました。

AARは、難民や受け入れ地域の子どもたち、特に女子生徒が通学を諦めることがないよう、衛生環境を整備する活動を続けてまいります。引き続きご協力くださいますよう、お願い申し上げます。

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今野 聖巳KONNO Satomi.東京事務局

2023年にAAR入職。モルドバ駐在員、ケニア駐在員として難民支援に従事した後、支援事業部でケニア事業を担当

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