
縫い方を確認し、服作りに励む女性たち=シャフリナブ市での縫製研修で2026年2月26日
中央アジアの内陸国、タジキスタンは、人口約1,080万人の農業国です。1人当たりの年間GDPは1,000ドル台と決して豊かではありません。国連の障害者権利条約は192カ国で批准されていますが、タジキスタンはまだ批准していません。障がい者への差別や偏見は強く、特に女性は厳しい状況におかれています。
「AARの縫製研修に参加して、私の人生は大きく変わりました。特に幸せを感じたのは、研修に行く途中で多くの人や車を目にしたこと。それまで家を出ることはほとんどなく、そうした光景を見るのは初めて。まるで新しい世界に足を踏み入れたようでした」
目を輝かせて語るのは、歩行に軽い障がいがあり、2025年の縫製研修に参加したフォティマさん。20年以上前からタジキスタンで障がい者支援を続け、2010年からは障がいのある女性や障がい児を育てる女性の自立を目標に、縫製研修を定期的に開催しています。25年度は、首都ドゥシャンベ近郊のシャフリナブ市、バフダット市、ヒッサール市で計87人が受講しました。
完成品の販売会も
研修は1回3時間で週3回、6カ月間続きます。採寸、型紙作り、布の裁断、ミシンでの縫製を学び、数着のワンピースとズボンを完成させます。最後は完成品を自分たちで街頭販売します。

左)歩行に困難があるズライホさん。ミシンの使い方をあっと言う間に覚えました 右)完成した服を手にするフォティマさん
当初は、はさみやミシンをこわごわ触っていた彼女たちが、何度も失敗しながら励まし合い、最後は自信に満ちた笑顔でミシンを使いこなす姿には胸を打つものがあります。研修後、実際に縫製の仕事に就く女性も多数います。
参加者が得るのは、収入をもたらす技術だけではありません。フォティマさんのように家にこもる障がい者女性は多く、教室に通うために外に出て、仲間と出会うのは大きな変化です。彼女は「これまで姪にプレゼントをすることもできなかった私が、今では何種類ものドレスを作ってあげられる。信じられないぐらいうれしくて、泣いてしまいました」と話します。街頭販売会では500ソモニ(庶民的な昼食代金約20ソモニの40倍相当。日本円で約8,000円)を売上げて小躍りして喜んでいました。

出来上がった服の街頭販売会=バフダット市で2025年
縫製研修には課題もあります。家にこもる障がい者を見つけて参加を呼びかけることの難しさや、夫や父親の反対により途中で参加を断念せざるを得ない女性がいることです。26年度にはシャフリナブ市で研修を続けるだけでなく、ミシンを自由に使える部屋を用意するなどして、研修後も女性たちを支えることを検討しています。

高島 公美 TAKASHIMA Masamiドゥシャンベ事務所
2007年にインド北部で初等教育支援に取り組んだ後、モロッコ王国やガイアナ共和国でJICA海外協力隊員として幼児教育に従事。その後、カンボジアやウガンダで初等教育支援の駐在職員を務め、2024年にAAR入職。



