「日本の皆さんの支援に感謝します」――。ロシアの軍事侵攻によって未曽有の人道危機に陥った東欧ウクライナに、AAR Japan[難民を助ける会]が隣国ポーランドのカトリック教会と協力して送った支援物資が届きました。ポーランドの首都ワルシャワからAAR東京事務局の中坪央暁が報告します。
ロシア軍の攻撃にさらされるウクライナ東部から避難した女性や子どもなど約70人が身を寄せる同国西部テルノピリ州の修道院に3月14日、待ちに待った支援物資が車両で届けられました。ワルシャワで集められた食料(小麦粉、缶詰類)や医薬品、衛生用品(石けん、おむつ、生理用品)、子ども用衣類などが詰め込まれた箱が降ろされると、シスターの指示で子どもたちも手伝って屋内に運びました。これらの支援物資は前週末12日にワルシャワを出発し、国境を越えて丸2日がかりで現地に到着したものです。
AARはポーランド・ウクライナ両国にネットワークを持つポーランドのカトリック教会の「汚れなき聖母マリアの修道女会」と連携し、当会に寄せられたご寄付で調達したり、教会関係者が提供したりした緊急支援物資を、陸路越境してウクライナ西部に輸送する国内避難民支援を実施しています。
古い歴史を持つ修道院には2月末以降、ロシア軍の攻撃を受けた北東部の都市ハリコフの母子施設で暮らしていた約70人の女性や子どもが身を寄せるほか、ポーランド国境を目指す人々が臨泊する中継地にもなっています。また、近隣の町に数千人規模の国内避難民が滞留しており、支援物資は必要に応じてシスターたちが分配しています。
支援物資を受け取ったポーランド人のシスター・ユリア、ウクライナ人のシスター・タチアナは「ウクライナ国内の混乱でさまざまな物資が枯渇する中、ポーランド側から届いた支援物資に皆が喜んでいます。モノをもらっただけではなく、外の人々とつながっているという安堵感が避難している人々の心を癒します。日本の皆さんの温かいご支援に心から感謝いたします」と話します。
国際秩序を根底から覆す軍事侵攻によって発生したウクライナの混乱は、21世紀最大級の人道危機へと拡大しています。AARのウクライナ難民・国内避難民支援へのご協力を重ねてお願い申し上げます。
中坪央暁 NAKATSUBO Hiroaki東京事務局
全国紙特派員・編集デスクを経て、国際協力機構(JICA)の平和構築事業に従事。東ティモール独立、アフガニスタン紛争のほか、南スーダン、ウガンダ北部、フィリピン・ミンダナオ島など紛争・難民問題を長期取材。2017年11月AAR入職、2019年9月までバングラデシュ・コックスバザール駐在としてロヒンギャ難民支援に携わる。著書『ロヒンギャ難民100万人の衝撃』(めこん)、共著『緊急人道支援の世紀』(ナカニシヤ出版)、共訳『世界の先住民族~危機にたつ人びと』(明石書店)ほか。