ロシアのウクライナ軍事侵攻から2カ月余り、西隣のポーランドをはじめ周辺国に逃れた難民は約550万人、国内避難民も700万人を超え、第二次世界大戦以降最大の人道危機が続いています。AAR Japan[難民を助ける会]がポーランドのカトリック修道会と連携して支援しているウクライナ西部テルノピリ州の修道院に、医薬品を備えた診療室と子どもたちの遊び場が整備されました。AAR東京事務局の中坪央暁が報告します。
この修道院にはウクライナ東部から逃れて来た母子を中心に約80人が身を寄せるほか、ポーランドに向かう避難者の臨泊施設にもなっています。避難生活の長期化に加え、体調を崩しがちな子どもや高齢者がいることから、地元の医療関係者の協力を受けて、修道院の一室を診療所として整備しました。ポーランド側で調達した医薬品や包帯、ガーゼなどを備蓄するほか、医師による簡単な治療を受けられるように診療台を備えています。
また、10歳までの子どもたち約50人が学校にも行けず、修道院内で毎日過ごしているため、敷地の一角に遊具を設置してプレイエリア(遊び場)をつくりました。修道院長のシスター・ユリアは「AARから送ってもらった資機材を使って、子どもと母親、ボランティアが一緒に作業しました。子どもたちは屋外で伸び伸び遊べるようになりました」と話します。
修道院は地元行政やコミュニティと緊密に連携しており、ポーランド側から越境して輸送された食料や医薬品、衛生用品など支援物資の一部は、20キロほど離れた大きな町や近隣の村々に避難している人々、地域住民、さらに地元の病院にも必要に応じて分配されています。
「東部地域からの避難者は乳幼児を抱えた母親や高齢者が多く、修道院に助けを求めて来ます。私たちは修道院以外にも約15家族に食料・離乳食、衛生用品を日常的に届けています」 (シスター・ユリア)。
難民の障がい児リハビリを実施
ポーランド側でもウクライナ難民への支援が行われています。難民の中には脳性まひなど障がいがある子どもがいることから、修道会本部では首都ワルシャワ郊外の施設で理学療法に基づくリハビリテーションを施すとともに、AARの資金で身体を動かしやすい服や歩行補助具を購入しました。
また、修道会が国境近くの町で運営する小学校が子ども10人を受け入れたほか、難民の母子たちを何組もホームステイさせている地元の一般家庭に子ども服や靴を届けて喜ばれています。
こうした支援活動はすべて日本でお寄せいただいたご寄付が原資になっており、それをポーランド・ウクライナ両国にまたがる修道会のネットワークに乗せて、困難に直面する人々に確かな支援の形にして届けています。AARのウクライナ緊急支援へのご理解・ご協力を重ねてお願い申し上げます。
中坪 央暁NAKATSUBO Hiroaki東京事務局
大手新聞社の海外特派員・編集デスクの後、国際協力機構(JICA)の派遣でアフリカ・アジアの紛争復興・平和構築を取材。AARコックスバザール駐在を経て東京事務局勤務。