2011年のシリア内戦発生から11年余りが経ちます。AAR Japan[難民を助ける会]は2014年以降、現地協力団体を通じて、シリアの国内避難民の生活を支えるさまざまな支援を実施しています。困窮世帯への食糧配付と並行して、2021年11月から実施した農業支援の成果を報告します。
厳しさを増す人々の生活
AARが支援するシリア国内の地域では、人口の約8割が人道支援に頼って暮らしていますが、物価の高騰や農業生産の減少などの影響で、人々の生活は厳しくなる一方です。さらに今年2月から続くウクライナ危機は、シリアを含む中東諸国に食料不足をもたらしています。
AARは小規模農家250人を対象として、小麦の収量向上のための農業支援を実施し、種子や肥料、農薬を提供するとともに、栽培方法や害虫駆除、収穫後の保存方法などについて専門家による研修を行いました。2022年6月の収穫では、農家1戸あたり平均3.5トンを収穫し、平均1,750ドルの収入につながりました。この地域の今年の平均収穫量は0.1ヘクタールあたり300〜350キロですが、参加した農家の中には400〜450キロを収穫した例もあります。
「家族のためにお金を貯めることができました」
小麦栽培と羊の飼育に取り組むアブ・サットゥーフさん(55歳)は、33歳の長子を筆頭に16人の子だくさん。「2014年にシリア軍による大規模な砲撃を受けて、私たち家族は数年間、村を離れなければなりませんでした。その間に村は荒廃し、多くの住民が去りましたが、私は自分の土地で農業を続ける決意をしました。しかし、肥料を買う余裕もなく、治安の悪化や水不足で苦しい時期が続きました」と話します。
AARの支援を受けて、農家としての知見が深まったというサットゥーフさん。「害虫やネズミの駆除、農業用肥料の使い方などの研修は非常に有益でした。おかげで良質な小麦を4トンも収穫し、家族のために少しばかりお金を貯めることができて、本当に感謝しています」と笑顔を見せました。
シリア内戦が終息しないまま、国内に残る多くの人々が極めて困難な状況に置かれています。AARは今後もさまざまな分野でシリアの人々を支援してまいります。