活動レポート Report

ウクライナ難民を中長期的に支援:モルドバ

2023年4月26日

ロシアによる軍事侵攻で祖国を追われ、隣国モルドバに滞在するウクライナ難民は10万人に上ります。AAR Japan[難民を助ける会]は2022年3月にモルドバで緊急支援を開始し、現在は首都キシナウの現地事務所を拠点に中長期的な支援活動に取り組んでいます。現地から報告します。

ウクライナ解説動画(読売テレビ×AAR Japan
ウクライナ支援活動報告

ウクライナ女性二人に話を聞くAAR職員

キシナウの大学寮でウクライナ難民の女性に話を聞くAAR東京事務局の八木純二=2023年1月

相談窓口を通じてサポート
ウクライナ人道危機が始まった当初、AARは難民が滞在する大学寮や保養所に温かい食事や食材、生活用品を提供しました。モルドバ政府も市民社会も難民支援に積極的ですが、経済規模が小さく、多くの課題を抱える同国では対応に限界があります。自宅に難民を受け入れて衣食住を提供しているモルドバ市民が少なくない一方、事態が長引くにつれて「なぜウクライナ人ばかり優遇されるのか」という不満も聞かれるようになりました。

AARは現地協力団体と連携し、女性と子どもを中心とする難民の人々が医療・教育などの公的サービスを受けながら生活環境を整え、子どもの将来を描くことができる支援を実施しています。そのひとつとして、キシナウ市内に開設したコミュニティセンターでは、ウクライナ難民とモルドバ住民双方の母子家庭や障がい者世帯など、特に困窮する人々が必要不可欠なサポートを受けられるように支援しています。

相談窓口には難民や住民から「収入が乏しく生活が苦しい」「持病の治療を受けたいが、どこに行けばいいか」などの相談が持ち込まれ、カウンセリングにあたる社会福祉士が一人ひとりの生活状況やニーズを把握して、食料・生活用品を提供したり、行政や支援団体による医療サービスにつないだりします。AARは現地協力団体を通じてコミュニティセンターの運営を支えています。

机に向かいあう二人の女性

キシナウのコミュニティセンターでウクライナ難民女性(左)から生活相談を受ける社会福祉士

地方に滞在する難民を個別支援
ウクライナ難民はモルドバ全域に散らばっていますが、特に北部地域は支援が届きにくい状況にあります。AARは現地協力団体とともに北部7県で難民の滞在施設やモルドバの困窮世帯を訪問し、それぞれのニーズを把握したうえで個別支援を行っています。対象となるウクライナ難民は母子だけの世帯が大半を占め、モルドバ住民の場合は6割超が65歳以上の高齢者世帯です。必要な支援として、食料・生活用品に加え、冬季は暖房用の練炭、防寒着や寝具を届けました。

椅子に座る赤い服を着たウクライナの女性

モルドバ北部で暮らすオレクサンドラさん

モルドバ北部の都市バルティ近郊の小さなアパートで、親戚の元で暮らすオレクサンドラさん(70歳)はウクライナ東部ドニプロペトロウシク州の出身。夫と死別して悲しみに沈んでいた時に軍事侵攻が始まったといいます。「国連機関からの補助金だけではとても足りません。AARの支援で食料や持病の医薬品、衛生用品、防寒着を受け取ることができました。特に薬は高額なため、節約生活しても買えずに困っていたので本当に助かっています」

子どもたち同士の交流を促進
モルドバ北部の都市ファレシュティでは、地元団体と行政が子どもたちの活動施設チャイルド・フレンドリー・スペース(CFS)を運営し、AARはその活動をサポートしています。元々は地元モルドバ人の児童のための施設ですが、ウクライナから避難してきた子どもたちもセンターを利用するようになったため、双方の子どもたちが図画工作やゲームなどのグループ活動を通じて交流し、互いを理解するプログラムが導入されました。難民とホストコミュニティ(受け入れ地域)の住民の間で確執が生じる事態は世界各地で起きていますが、ここでは子どもたちが自然に交流しており、それが大人たちにも良い影響を広げることが期待されます。

大きな紙に絵を描き、笑顔を見せる二人の女の子

チャイルド・フレンドリー・スペースで絵を描いて楽しむ子どもたち

ウクライナ軍事侵攻の終結の兆しが見えない中、ウクライナ難民の母子や高齢者、それを支えるモルドバの地域社会に対する中長期的支援がますます重要になっています。AARのウクライナ人道支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

この活動は皆さまからのご寄付に加え、ジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。

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