活動レポート Report

スーダンの人々を思いながら:帰国のご報告

2023年5月2日

治安情勢が悪化したスーダンに短期出張で滞在していたAAR Japan[難民を助ける会]海外駐在員、相波優太が4月29日、自衛隊機で退避した近隣国ジブチから帰国いたしました。現地での安全確保と退避・帰国にご尽力いただいた日本政府、国際協力機構(JICA)、国際機関をはじめとする関係各位、無事を祈ってくださった支援者の皆さまに重ねて御礼申し上げます。スーダンからの退避の様子を相波が報告します。

スーダンから退避のNGO職員 現地の緊迫した状況など語る | NHK【NHK】情勢悪化が続くスーダンから29日、チャーター機で帰国した日本人とその家族48人のうち、国際NGO「難民を助ける会」の職員…

感謝の気持ちでいっぱいです

先週土曜日の朝、羽田空港に到着した時は本当にホッとしました。さすがに疲れましたが、健康状態に問題はありません。スーダンからの退避と帰国にあたって、日本外務省や自衛隊、JICA、他の支援団体、そしてスーダンの人々にお世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

少し離れたところにあるビルから黒煙があがっている写真

ハルツーム国際空港付近から立ち上る黒煙。退避先の他団体の事務所から撮影=4月20日

AARは製薬大手のエーザイ株式会社との協働事業として、スーダンの熱帯病マイセトーマ対策に取り組んでいます。私は4月1日から首都ハルツームに出張していましたが、15日の朝に街の様子が変わったことに気付きました。最初は散発的に聞こえていた銃声が徐々に激しくなっていくのが分かりました。いつもは交通量が少ない週末の朝、車が激しく行き来するなど、明らかに非常事態が起きていると感じ、これからどうなっていくのか不安が高まりました。

日に日に銃声や爆撃音が大きく聞こえるようになり、AAR事務所の窓枠がガタガタ揺れたこともあります。出歩くのは危険なので外出を控え、一人で事務所に身を潜めていました。その間、スーダン人の大家さんがジェネレーターを回してくれたおかげで、1日2回の東京事務局との安否確認の連絡をとることができました。その後、他の人道支援団体と合流し、そこの宿舎や現地職員の方の自宅でお世話になりました。初対面なのに自宅に滞在させてくれただけでなく、戦闘の合間を縫って食料や飲料水を買ってきて分けてくれましたし、一人でなくなったことで、とても安心しました。

早朝、道路に数台の車が停まり、人々が車外に出ている写真

ポートスーダンへの退避の途中、早朝5時の小休憩の様子=4月24日

日本大使館やJICAなど関係者と連絡を取り合い、22日午前、砲撃の爆音が聞こえる中、JICA車両でピックアップしてもらい、緊急退避のために在留邦人の集合場所に向かいました。そこからスーダン軍や準軍事組織のチェックポイントを超えて、他の在留邦人の皆さんと国連の車列に加わり、北東部ポートスーダンまで約800キロを陸路移動しました。

途中では、焼け焦げた戦車や車両を何台も目にしました。通常であれば12時間ほどの行程ですが、50台以上の車両が連なっていたためゆっくりしか進むことができず、30時間以上かかりました。車内ではほとんど眠ることもできず、疲労困憊しましたが、空港にたどり着いて自衛隊の皆さんに迎えられた時は、本当に安心しました。

道路からはずれた土の上に敷物を敷き、男性がお祈りしている

退避中の休憩でお祈りするスーダン人のバス運転手=4月24日

現地時間の24日午後、待機していた航空自衛隊の輸送機に乗ってジブチに退避し、健康チェックを受けて休憩を取りました。大使館や他団体の皆さんと無事を喜び合いました。28日午前、チャーター機で出発し、29日早朝に羽田空港に降り立った時は、「ああ、無事に帰って来られたんだ」と実感しました。出迎えの同僚たちや家族の顔を見て心底安心しました。

日の丸が掲げられた小さな飛行機内で、迷彩服を着た数人が話している

在留邦人を乗せてジブチに退避する自衛隊機の機内=4月24日

スーダンの状況に関心を持って

今、思うのは、厳しい状況に置かれたスーダンの人々、そして一緒に働いていた現地職員のことです。私のために避難場所や食料を提供してくれた人がたくさんいましたし、東京事務局との連絡が途切れないようにと電子マネーで通信データを送ってくれた人もいました。本当に思いやりのある優しい人たちです。

そんな彼らは今、とても大変な状況に取り残されています。激しい戦闘に巻き込まれて、多数の市民が犠牲になっています。今こそ人道支援が必要なのですが、こうした状況で私たちにできることは限られています。本当に歯がゆい思いです。

私はたくさんのスーダンの人々の善意に助けられました。情勢が落ち着いたら、再びスーダンに戻って恩返ししなければならないと考えています。日本人にとってスーダンはなじみがない遠い国だと思いますが、今回の事態をきっかけに、少しでも多くの皆さんにスーダンに関心を持っていただければ幸いです。そして、一日も早くスーダンに平和が戻ることを願わずにはいられません。

相波 優太AIBA Yuta海外駐在員

大学院で平和構築を学んだ後、民間企業でODAを通じた海外のインフラ整備案件に携わる。AAR東京事務局勤務を経て、2023年よりウガンダ駐在

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