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活動レポート Report

日本の大学・企業から感染症対策を学ぶオンライン研修:マイセトーマ対策事業

2022年8月10日

AAR Japan[難民を助ける会]は2013年以降、スーダンで「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases:以下NTDs)」のひとつであるマイセトーマ対策事業を実施し、2019年からは製薬大手のエーザイ株式会社(本社:東京都文京区)と協働を開始しました。さらに2022年度は国立研究開発法人 国立国際医療研究センターの事業委託を受け、「感染症の抑制」と「患者への支援の拡大」のため、現地の患者支援団体や医療従事者、医科大学関係者の能力強化とネットワークづくりを通じた持続可能な体制作りに注力しています。
その第一弾として7月5日、日本の大学・企業の研究者らを講師に招き、スーダンの現地協力団体や関連団体を対象に実施したオンライン研修の様子を、駐在員の大澤由恵が報告します。

オンライン会議の画面

オンラインを通じてスーダンの現地協力団体や関連団体から19名が参加しました

NTDsを知っていますか? その名の通り、人々の生活に甚大な影響を及ぼすことがわかっていながら、これまで主要な疾患とされず、十分な対策がとられてこなかった熱帯病のことです。WHO(世界保健機関)では現在20のNTDsが指定されています。

AARが活動するスーダンでは、NTDsの中でも特に対策が遅れている「マイセトーマ」が流行しています。感染経路は未だ明らかになっていませんが、皮膚から侵入した真菌や細菌が徐々に筋肉や骨をむしばみ、患部を変形させていくもので、特効薬はありません。症状の進行が遅く、痛みが少ないため感染したことに気がつかない、または違和感があってもそのままにしてしまい、医療機関を受診したときには感染した手足を切断するしかないほど重症化していることが多々あります。

日本にもあったNTDs

長崎大学熱帯医学研究所の金子聰教授から、NTDsの一つである「日本住血吸虫症」について講義いただきました。熱帯病と聞くと、日本とは関係がないように思われがちですが、かつて山梨県で「日本住血吸虫症」が流行しました。この感染症は、寄生虫に汚染された水が皮膚につき、皮膚から体内に侵入した寄生虫によって内臓が傷つけられていくものです。日本がどのようにこの感染症に対処し、感染症が根絶したか、また、水田や沼などで、寄生虫が取りつく巻貝を住民が主体となって駆除していった事例をお話しいただきました。

オンライン会議の画面

かつて日本で流行した感染症についてお話しする長崎大学熱帯医学研究所の金子聰教授

人と動物同士で感染を広げないために

エーザイ株式会社の飛弾隆之様、畑桂様、中野今日子様からは、「NTDs制圧への企業の取り組み」や「マイセトーマ治療薬の開発」、さらに「人間と動物に共通する感染症への対処方針『One Health』」について講義いただきました。スーダンでは人と動物(家畜)がほぼ同じ場所・動線上で生活することが多く、人から動物へ、または動物から人へと何らかの感染症が広まることが懸念されます。そのため、感染症対策を考える際には、住環境や人と動物(家畜)との関わりについても包括的に検討していく必要があるという「One Health」の概念が語られました。

3名の顔写真

エーザイ 飛弾隆之様(左)、畑桂様(中央)、中野今日子様(右)からは、同社における感染症の取り組み事例や、対策方針などをご説明いただきました

講義を聞いた参加者は、「日本住血吸虫症」の対策において住民が主体となって行動したことに驚くとともに、住民への啓発や、住民同士で協力し合うことの重要性を改めて感じていました。また、住環境や人と動物との関わりについても多くの参加者の印象に残ったようで、「今まで知らなかった情報がたくさんあり、勉強になった。これからも日本の皆さんとの協力を続けていきたい」。「私たちがまさに必要としている知識を学ぶことができ、とても有意義だった」といった感想が寄せられました。

スーダン国内での取り組みを推進

ほかにも、NTDsのネットワークについて、金子教授、エーザイの皆さまよりご説明いただきました。世界にはWHOやNTDsのネットワークがあり、日本にも国内の研究機関や企業からなるネットワークがあります。しかし、スーダンには複数のNTDsが流行しているにも関わらず、このようなネットワークがありません。

講義後に行った参加者同士のグループディスカッションでは、スーダン国内の機関や団体がどのようにNTDsの制圧に向けて協力できるか活発な議論が交わされ、国内のNTDs対策ネットワークの設立をめざし、今後検討していくことになりました。さらに、マイセトーマについての国内での認知がまだまだ低いことから、どのように住民に情報を周知すべきかについても話し合いました。参加者からは、村落で啓発を担当するスタッフの能力強化に加えて、ラジオやテレビ、SNSといったツールを使った情報拡散についての意見があがりました。

女性が会議している

スーダン国内のNTDs対策ネットワークの設立に向けて議論する参加者

大きなカイミを広げて話し合っている

マイセトーマの正しい情報をどのように住民に周知すべきかについても、話し合いました

この研修で得た知識を生かし、AAR は、スーダン国内の関係団体との連携をさらに深めながら、マイセトーマの制圧に向け、今後も取り組んでまいります。

本事業は、国立研究開発法人国立国際医療研究センターが主体となって実施する厚生労働省より委託された令和4年度 医療技術等国際展開推進事業です。

大澤 由恵OSAWA Yoshieスーダン事務所

在学中に中国へ留学し、日中の戦争についての歴史教育を調査。日本とタイの大学院で、タイの難民キャンプにおけるミャンマーの少数民族の教育を研究。その後、香港の日本人学校で教員に。2019年7月に入職し、タジキスタン、トルコ、スーダンで駐在員として勤務。

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