活動レポート Report

熱帯病に苦しむスーダンの人々のために:マイセトーマ対策事業

2021年11月4日

AAR Japan[難民を助ける会]は2013年以降、スーダンで「顧みられない熱帯病」のひとつであるマイセトーマ対策事業を実施し、2019年からは製薬大手のエーザイ株式会社(本社:東京都文京区)と協働で撲滅に向けた取り組みを続けています。2020年7月から14カ月間のプロジェクトの成果を事業担当の北朱美が報告します。

小学生くらいの自動たちがパンフレットをのぞき込んでいる

啓発セッションで配られたパンフレットに見入る女子生徒たち。マイセトーマにかかった患者が適切な治療を受けて回復するストーリーが盛り込まれている=ジャジーラ州アブゴタ村で2021年3月

首都ハルツームから車で約2時間半、スーダン中東部のジャジーラ州は大規模な綿花栽培で知られる一方、マイセトーマの蔓延地域でもあります。マイセトーマは主に足の小さい傷から土壌の細菌や真菌(カビ)が皮下組織に入り込み、徐々に骨や筋肉を破壊していく深刻な炎症性疾患で、下肢の切断に至るケースもあります。アフリカ、アジア、中南米の熱帯・亜熱帯地域で多数の感染がみられます。

AARは昨年7月以降、エーザイと連携して、同州エルマナキル市とアブゴタ村で、マイセトーマ患者と家族、地域住民にこの病気や治療法について正しい知識を身につけ、早期受診の重要性を理解してもらうために、聞き取り調査や啓発活動、病院での手術の実施などを進めてきました。

スタッフが女性に話をしている 女性は紙を読んでいる

マイセトーマ患者(中央)と家族に手術について説明するスタッフ=ジャジーラ州エルマナキル市で2021年7月

学校や集会所で開かれた啓発セッションには合計で約1,000人が参加し、マイセトーマの原因と特徴、治療法について医療スタッフが説明するとともに、パンフレットやポスターを配付しました。参加者からは「この病気は人から人に感染するのか」「自宅で患部をどのように扱えばいいのか」などの質問が相次ぎ、事前調査ではマイセトーマについて正確に理解していた住民が4割程度だったのに対し、啓発後は9割近くに向上しました。

マイセトーマ患者の足が写ったA3サイズほどの写真をスタッフが持ち説明している

学校で行われた啓発セッション=アブゴタ村で2021年3月

マイセトーマに関するポスターを持ってカメラに向かい微笑む人々

啓発活動としてポスターを配付。三輪車タクシーの運転手(右)が車体にポスターを貼ってくれた=アブゴタ村で2021年3月

また、重症患者の外科手術を設備が整った国立ハルツーム大学付属ソバ病院、エルマナキル病院に手配し、71人が患部の切除・切断手術を受けました。手術に際しては、症状を放置すれば歩行障がいや二次感染による生命の危機につながることを説明し、患者本人や家族がよく理解したうえで、治療を受けてもらいました。AARは協力機関とともに、引き続き術後の経過をフォローしています。

手術室で3人が手術に臨んでいる

エルマナキル病院で行われたマイセトーマ患者の手術。多くの医療従事者がボランティアで参加した=エルマナキル市で2021年7月

AARは2013年から同国でマイセトーマの衛生啓発活動を実施する一方、エーザイは独自に創出した治療薬が真菌性マイセトーマに効く可能性があるとして、2017年に臨床試験を開始しました。この過程でAARとエーザイが連携協定を結び、多くの知見を持つハルツーム大学マイセトーマ研究所などと協力して、撲滅に向けた事業を行っています。

AARはスーダンで安全な水を確保するための井戸建設、同国に流入したエチオピア難民居住地の衛生改善事業など、人々の健康を守る事業に長年取り組んでいます。また、新型コロナウイルス感染対策として、今年4月以降、エーザイから提供されたマスク25万枚をスーダン、ウガンダ、ザンビアで配付しました。AARの保健・衛生分野の活動へのご理解・ご支援をよろしくお願い申し上げます。

*写真はいずれも現地協力団体撮影

北朱美KITA Akemi東京事務局

臨床検査技師として病院に勤務した後、タイで公衆衛生を学ぶ。帰国後、AARへ。ザンビア事務所、ミャンマー事務所、パキスタン事務所駐在を経て、2017年より東京事務局勤務。長崎県出身

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