
AAR能登事務所にて
能登事務所に常駐して現地での活動を担う栁町さん。障がい者支援に携わるきっかけや能登での活動について話を聞きました。
障がい者支援に携わるようになったきっかけは?
学生の頃から、困っている人の役に立ちたいという想いがありました。その中で障がい者と関わることを選んだのは、自分の内面への問題意識があったからです。誰しも、人間は平等であることを頭では理解していても、障がいのある人をどこかで区別して見てしまっていると思います。自分と同じとは思えない、という捉え方をしてしまう。自分も、特に、重度の障がいがある方と同じ目線に立つことの難しさを感じており、頭では「平等」を理解していても、そのとおりにはできていませんでした。
だから、その中へ飛び込んでいって、実際に接してみることが、自分にとって重要なことに思えました。良くない感情も起こるだろうけれど、それがなぜ起こるのかを、体験として感じたかった。実際に関わっていくことで、自分の捉え方や世間の見え方が変わっていくのではないかと思い、大学卒業後に障がい者福祉のボランティアに参加しました。その後は、専門学校に入り直して社会福祉の資格を取り、障がい福祉事業所で20年近く働きました。
AARに入ったきっかけは?
東日本大震災の際に岩手で1カ月ほど活動した経験もあり、障がい者の中でも、災害によってより厳しい環境に置かれている方への支援の重要性を感じていました。最初に能登に入ったのは、JDF(日本障害フォーラム)の派遣のローテーション枠での活動で、2024年5月から8月に3週間、被災した障がい者の支援に携わりました。
AARのことを知ったのは、その時に協働したからです。正直に言うと、能登に入るまではAARのことを知らなかったのですが、とにかく、動きの速さに驚きました。地震の2日後には現地に入っているという意思決定の早さは、さすが緊急支援の団体だと思いました。また、震災後の混乱した状況で障がいのある方への支援をきちんとやっていることにも驚きました。
実際に現地で活動すると、より長期的に能登の復興に携わりたいと思うようになりました。障がい者支援と災害支援の両方をやっている団体はほとんどありませんでしたし、AARなら自分でも役に立てるのではないかと思い、加わりました。
能登ではどんな活動をしていますか?
現在、能登事務所に常駐しているのは私だけなので、病院への送迎から事務作業まで、必要なことは何でもやっています。今年8月末の大雨被害の際は、被災した福祉施設を訪問して、泥かきなどの復旧作業から支援内容の調整まで対応しました。障がい者福祉と災害支援の両方ができる団体は本当に少ないので、AARに相談するという選択肢を障がい者施設に提案できることは、意義のあることだと思います。

ショートステイへの送迎をするAAR能登事務所の栁町幸平(右)=石川県中能登町で2025年12月1日
能登半島地震の復興に向けた個別支援で多いのは、家屋に関する問題です。壊れた家にそのまま住み続けている方が今も少なくありません。行政の応急修理制度の申請をお手伝いしながら、屋根の補修や応急処置など制度では賄えない部分に対応しています。
こうした活動は、協力団体との連携の上に成り立っています。社会福祉法人が運営する相談支援事業所や、専門が異なる災害支援団体とも、それぞれの強みを生かしながら必要なタイミングで一緒に被災者支援に取り組んでいます。今日対応していたのも、就労支援センターから「うちでは対応できないのですが、AARさんではどうですか」とご相談いただいた案件でした。
災害関連制度の多くは、本人から動いて申請や手続きをすることを前提としているため、障がいや被災の状況によってはそれができない方もいます。そのために注力しているのが、ニーズの掘り起こしです。被災された障がい者はそもそも声を上げにくいので、こちらから家庭を訪ね、話を聞きに行きます。声を上げられる方には支援が届き、上げられない方には届かない。その差を埋めることが、私たちの役割だと思っています。
ビルド・バック・ベター(より良い復興)として、現在取り組んでいるのが、防災プラットフォームの整備です。簡単に言うと、災害が起きたときに、障がい者などの要配慮者が安定して避難できる体制を、あらかじめ地域に整えておく取り組みです。よく言われることですが、障がい者が暮らしやすい社会は、すべての人が暮らしやすい社会でもあります。AARの強みを活かしながら、地域の皆さんとともに災害に強い地域づくりを進めていきたいと思います。

栁町 幸平YANAGIMACHI Kohei能登事務所
大学卒業後、専門学校で社会福祉士の資格を取得し、障がい福祉事業所で障がいのある方の自立支援に従事。能登半島地震の発生を受けて、現地で障がい者支援に従事した後、2024年にAARに入職。能登事務所に常駐



