活動レポート Report

ウクライナ難民が集う交流施設オープン:モルドバ

2023年7月15日

ロシアによるウクライナ軍事侵攻が長期化する中、今も約11万人の難民が滞在する隣国モルドバ。AAR Japan[難民を助ける会]はこのほど、首都キシナウに新たなコミュニティセンターを開設し、誰もが安心して過ごせる場所を提供しました。オープン初日の様子をAARモルドバ事務所の今野聖巳が報告します。

大きな複数のクッションに座っり触って遊ぶ子供たちの写真

コミュニティセンターで遊ぶウクライナ人とモルドバ人の子どもたち=キシナウで2023年7月11日

キシナウ市街の並木道に面したモダンな建物の入り口を抜けると、広々とした明るい空間に子どもたちの楽しそうな笑い声が響きます。カラフルな装飾があしらわれたセンター内では、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の人々が思い思いの時間を過ごしています。AARが現地協力団体レジーナ・パシス財団(Regina Pacis Foundation)とともに運営する新しいコミュニティセンターは、夏らしい陽気の7月11日にオープンを迎えました。

「モルドバの文化を学びたい」

AARは軍事侵攻が始まった直後の昨年3月、モルドバ国内でウクライナ難民支援を開始しました。継続的な取り組みを通じて、経済的に決して豊かではないモルドバの地元住民の中にも支援を必要とする人々が多数存在することを認識し、現在は難民と地元住民の双方に対して支援を行っています。

このセンターは、利用者登録をすれば、ウクライナ人もモルドバ人も、いつでも誰でも訪れることができます。ほっと一息ついて利用者同士で交流したり、子どもたちは本の読み聞かせや図画工作、大人は読書やガーデニング、アウトドアなど興味のあるアクティビティに参加したりすることもできます。

さらに、ここでは様々な問題を抱える利用者に対して、必要に応じた個別支援を提供します。職員が面談をして、その人が直面する健康あるいは心の問題、経済的な問題などを把握し、継続的にサポートしていくこともセンターの重要な役割です。支援を必要とする人を特定した場合は、協力団体の医師・心理療法士と連携して、より専門的なサービスを受けられるようにします。

チェストする男性2人の写真

チェスを楽しむウクライナ難民の男性(右)

この日センターを訪れ、チェスを楽しんでいた60代のウクライナ人男性は、戦闘が続く同国東部ハルキウ州から昨年避難してきました。協力団体の紹介でセンターを訪れたといいます。「これからの生活や故郷のことはとても心配です。そんな時にセンターの存在を知ることができて良かった。支援の相談だけでなく、活動にも参加して、モルドバの文化も少しずつ知っていきたいと思います」と話しました。

ウクライナ難民の母親が赤ちゃんを抱いている。横には父親がいる写真

コミュニティセンターの利用者登録に訪れたウクライナ難民の親子

両国の人々が語り合える場に

センターの運営に携わるAAR職員のオクサーナ・ハルボリンスカは、ウクライナ南部ヘルソン州から避難してきた難民のひとりです。母国で心理療法士としてキャリアを積んできたオクサーナは、誰かをサポートすることに大きな喜びを感じると言います。

「故郷の状況が心配ですし、今でもウクライナを離れた実感がわかないことがあります。でも、つらい時こそ親しい人とたくさん話をして、気持ちを落ち着けることが大事だというのも知っています。ここに来る人たちにも、たくさん話をして、安心して、笑顔になってほしいと思います。私は誰かと対話をして、その人の笑顔を見るのが好きなんです」

AARスタッフが利用者の女性から話を聞いている写真

利用者登録をするAAR職員のオクサーナ(中央)

協力団体レジーナの担当者は「難民と地元住民が分け隔てなく同じテーブルに座り、同じ課題について話し合い、ともに解決していく。そんな場にしていければ」と話します。

ウクライナ難民は軍事侵攻が始まって500日余りを経た今、先の見えない避難生活を続けています。AARは難民だけでなく、難民を受け入れる側の地元住民も安心して暮らしていくことができるよう支援を続けてまいります。引き続き、AARのウクライナ難民支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

今野 聖巳KONNO Satomiモルドバ事務所

大学院で国際法を専攻し、法律機関や大使館での勤務を経てAAR入職。2023年6月よりモルドバ事務所駐在。

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