活動レポート Report

障がい者が生きがいを持って暮らせるように:ラオス

2024年1月25日

東南アジアのラオスは経済成長が著しい国とされますが、この地で生活していると、経済指標では計れない人々の暮らしが見えてきます。障がい者に対する福祉政策の遅れもそのひとつであり、AAR Japan[難民を助ける会]は長年、障がい者が生計手段を持って自立できるように支援しています。AARビエンチャン事務所の山本慶史が報告します。

聞き取り調査をするスタッフ達

障がい者世帯の聞き取り調査をするAARスタッフのケオ(手前右)とブアサイ(左)=ラオス北部ウドムサイ県

「バイク修理で家族を養っています」

ラオスの障がい者は約68万人、総人口の約1割を占めるにもかかわらず、「障がい者の権利」を謳った法律ができたのは4年前の2019年のことです。障がい者はまだ疎外や嘲笑の対象になりがちで、その多くは職に就けずに家の農作業を手伝うなどして暮らしています。

とはいえ、日本と同じように自分で働きたいと望む障がい者は少なくありません。AARは現在、経済的に恵まれない同国北部ウドムサイ県でキノコ栽培、バイク修理、ヤギの飼育などの技術を指導し、障がい者が地域社会で生きている実感を持てるように、社会参加の環境づくりを進めています。

障がい啓発研修で講師を務めるスタッフ

障がい啓発研修で講師を務めるAARスタッフのノイ(左)

「バイク修理で安定した収入を得られるようになりました。妻と2人の子どもの生活を支えることができてうれしい」と話すのは、左脚まひの障がいがあるムイさん(27歳)。AARの技術研修を受けて自分の店を開業したムイさんは、自信を持って生き生きと暮らしているようでした。

右半身まひの障がいを抱えながら、ヤギの飼育に取り組むサワスさん(38歳)は「子ヤギが2頭生まれて全部で4頭になったんだ」と話します。左脚まひがあるブアロイさん(35歳)は、お母さんの助けを借りてキノコ栽培に励んでおり、「栽培研修で村のたくさんの人と交流できました。現金収入を得て両親を助けられて、こんなにうれしいことはありません」と声を弾ませます。

妻と長男とともにバイク修理店の前に立つムイさん

妻と長男とともにバイク修理店の前に立つムイさん

飼育小屋の前で笑顔を見せる外国人男性と収穫前のキノコを手にする外国人女性

飼育小屋の前で笑顔を見せるサワスさん(左)、キノコ栽培小屋で、収穫前のキノコを手にするブアロイさん(右)

これまで研修を受けた約100人のモニタリング(事後調査)を実施したところ、7~8割は実際に生計活動を続けて収入を得ていました。ラオスの平均月収は1~2万円程。修了生の中には約2万円を稼いでいる人もいますが、大半は月額3,000~4,000円ほどです。平均には及ばずささやかな生計活動ではありますが、障がい者が自分の力で生活の糧を得ることで、心の在りようまで変わるのを実感しました。

もちろん、うまくいかないケースもあります。キノコが思うように育たなかったり、ヤギが病気で死んでしまったり。それでも「材料や資材を渡して終わり」ではなく、やり方を改善して少しでも収入が得られるようにフォローを続けています。

障がいのあるスタッフとともに

AARビエンチャン事務所の現地スタッフ5人のうち3人は障がい者です。そのひとり、カイソンは左脚のまひで歩行が不自由です。AARの仕事を始めて、自分でも他人の役に立てる喜びを知ったと言います。昨年春、支援対象者を選ぶ聞き取り調査で訪れた村で、聴覚・言語障がいのあるソンペットさん(33歳)と出会いました。

ソンペットさんに参加してもらおうと一生懸命に説明したのですが、ソンペットさんはずっと背を向けたまま。家族にも手伝ってもらって約30分間説得を続けたところ、ようやく返事をしてくれました。「キノコ栽培ならやってみたい……」。今はもうすぐ始まる栽培研修を楽しみに待ってくれています。カイソンは、ソンペットさんを放っておけなかった、と話します。

外国人男性に語り掛けるスタッフ

ソンペットさん(左)に粘り強く語り掛けるスタッフのカイソン(右手前)たち

AARはラオスの障がい者一人ひとりが生きがいを持って生活できるように、地元の障がい者団体や行政職員と力を合わせ、ワンチームとなって支援事業に取り組んでいます。皆さまのご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

山本 慶史YAMAMOTO Yoshinobuラオス・ビエンチャン事務所

全国紙、地方紙記者を経て2023年2月にAARに入職、同年3月からラオス・ビエンチャン事務所駐在

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