パキスタンでは今年7月から続いた大雨によって、国内各地で大規模な洪水が発生しました。とりわけ山岳地帯が多い北部では土砂崩れや土石流が起こり、電気や給水、道路などの生活インフラが甚大な被害を受けています。寒さの厳しい冬を控え、復旧が進まないまま困難な状況にある被災地の人々の現状を、AAR Japan[難民を助ける会]パキスタン・イスラマバード事務所の小柳勇人が報告します。
AARが活動するハイバル・パフトゥンハー州のマヌール渓谷地域では、43カ村・約4万5,000人が暮らしています。大雨で土砂崩れが発生し、発電施設や給水設備、公立学校、診療所、村々をつなぐ橋など生活基盤が被害を受けました。この地域では各世帯が拠出金を出し合い、8カ所ある水力発電施設を管理してきましたが、これらの発電設備が土砂崩れの被害を受けて稼働できなくなり、人々は電気のない生活を余儀なくされています。
ムハンマドさん(45歳)は「この辺りはもともと貧しい地域です。仕事も少なく、人々は狭い土地での農業やクルミの採取、小さな雑貨店の経営などで生計を立ててきました。子どもの教育も十分ではありません。そこに今回の大雨被害があり、多くの施設や建物が壊されてしまいました。自分たちの力だけではとても復興できません」と話します。
パキスタンの山岳地域では井戸は普及しておらず、谷川や泉からパイプで引いてコンクリート製タンクなどに貯めた水を使っています。こうした給水施設も損壊し、地域の人々は山の上にある泉まで水を汲みに行かざるを得なくりました。
主婦のハッサンザリさんは(65歳)は被災後、素焼きの壺を頭に載せて山道を行き来し、泉で汲んだ水を運んでいます。「大変な作業です。飲み水だけでなく、洗濯に使う水も汲みに行かなければなりません。泉の水をそのまま飲むのは、衛生上不安ですが、他にどうしようもないのです」。
小さなお店を営むディルピザールさん(45歳)は、「電気と水が止まってしまうと、これまでのような生活ができません」と訴えます。「ソーラーパネルを持っている人もいますが、ほとんどの家は電気がない状態のままです。電気と水の復旧が最優先です」。
この地域の道路も洪水によって大きな被害を受けました。幹線道路などの主要な道路は政府によって修復が進められているものの、村の中を通る生活道路は今もあちこちで寸断されています。がけ崩れで道幅が狭くなり、歩行が危険な道もあります。
AARは現在、水力発電施設と給水設備、生活道路の復旧に向けた支援の準備を進めています。AARからの支援だけでなく、各世帯に少しずつでも資金を出してもらうことで、住民が主体となって復興を進めるとともに、補修後も自ら責任を持って維持管理を担える体制を構築します。AARのパキスタン洪水被災者支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。
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小柳 勇人OYANAGI Yutoパキスタン事務所
民間企業勤務や教員を経て2021年12月にAARに入職、2022年3月よりパキスタン・イスラマバード事務所駐在。