ロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まって間もなく3年になります。ウクライナ国内では、地雷や不発弾による犠牲者が今も増え続けています。AAR Japan[難民を助ける会]が地雷除去専門団体と連携して実施した地雷・不発弾の調査活動について、東京事務局の紺野誠二が報告します。

調査作業をするヘイロー・トラストの作業員=ウクライナ東部ハルキウ州で2024年8月
2024年10月時点で国土の4分の1が地雷で汚染されていると言われるウクライナ。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、軍事侵攻が始まった2022年2月24日以降、地雷や爆発性残存物によって413人の民間人が死亡し、966人が負傷しています。これはあくまで報告された数字であり、実際にはもっと多くの死傷者が出ていると言われています。

ドローンを使って地雷原の特定を行う
AARは、英国の地雷除去専門NGOヘイロー・トラスト(THE HALO TRUST)と連携して、ウクライナ国内で地雷の調査活動を行ってきました。ヘイローの調査チームは、2023年9月から2024年8月までの間にキーウ州、ハルキウ州、ヘルソン州などの68の村で活動を実施。地域住民や軍関係者への聞き取り調査などを通じて、新たに6つの危険地域を特定し、地雷の存在を示すマーキングを行いました。
また、キーウ州、ハルキウ州、ヘルソン州で27件の爆発物処理要請にも対応し、46個の爆発物を特定しました。そのうちの44個は遺棄された弾薬または不発弾であり、残りの2個はクラスター弾でした。
地雷除去活動において、最も基本的かつ重要なステップとなるのが調査活動です。地雷が存在しないことが確認できれば、安全な土地として使用することができます。また、リスクが高い場所を特定できれば、除去活動をより効率的かつ効果的に行えるようになり、何より新たな被害者を生むことを防ぐことができます。

ペチュニヒ村の土地の所有者であるオレクサンドルさん
ウクライナ東部ハルキウ州ペチェニヒ村は、「黄金の湾」と呼ばれるほどの美しいビーチリゾート地でした。しかし、ロシア軍による激しい砲撃を受けた後、手榴弾や対人地雷が散乱し、ビーチには誰も立ち入ることができなくなりました。
AARとヘイローはこの地域で調査を実施し、4カ所を地雷原として特定しました。その後除去作業が行われ、安全が確保された土地は所有者に返還されました。所有者のアレクサンドルさんは、「1年前なら、誰もこの場所に立ち入る勇気はなかったでしょう。ここを訪れる人々がリラックスできることが、私にとっての一番の喜びです」と安堵の笑みを浮かべました。

左:ペチュニヒ村で発見されたRGO手榴弾/右:「チョウチョ型地雷」と呼ばれるPFM-1
ウクライナでの調査活動では、新しい資機材が使われており、そのひとつがドローンです。空中式散布型の対人地雷PFM-1は、地面に埋まらず地表に残るため、ドローンによって発見することができます。

ビデオディスプレイを備えたハンドセットでドローンを操作
ヘイローの調査チームのイゴール・リーさんは、「最近、たった1⽇で300個以上の地雷を発⾒しました。どれだけの爆発物が残っているかまだ完全には分かりませんが、ウクライナの⼈々が安全な祖国に戻れるように最善を尽くします」と話します。
仮に、ウクライナでの軍事衝突が終結したとしても、地雷・不発弾は残されたままです。AARは現在、ウクライナでの地雷・不発弾対策として、地雷や不発弾の危険から身を守る方法を教える地雷回避教育を行っています。AARの地雷対策活動にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。
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紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局
AARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、コソボで8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は地雷問題やパキスタン事業を担当。