活動レポート Report

「知識」を「行動」に :ウクライナ地雷回避教育

2026年5月26日

ロシアによるウクライナ侵攻から4年。ウクライナ南部のミコライウ州では、地雷・不発弾の危険に加え、ミサイルやドローン攻撃の脅威が、今なお人々の日常を脅かしています。AARは2026年3月から、現地協力団体「The Tenth of April(TTA)」とともに、地雷や砲撃、ドローンの危険から命を守る行動を住民に伝える「リスク回避教育」の活動を始めました。4月に現地でスタッフへの研修を行った、地雷対策担当の紺野誠二が報告します。

膝をつき、後頭部に両手を回して身を守る格好を示すAAR紺野

実際に体を動かして身を守る方法を伝える紺野誠二(右)=ミコライウ市で2026年4月7日

深刻化する民間人被害

ウクライナは、地雷や不発弾による汚染が世界で最も深刻な国のひとつです。同国の統計によれば、2022年2月から2026年4月10日までに1,029件の事故が発生し、1,439人が死傷しました。記録に残らない被害も含めれば、実際の数はこれを上回ると考えられます。

被害者のうち約10%が子どもです。アフガニスタンなどの国では半数近くに上ることもあるので、ウクライナでは子ども向け回避教育が比較的充実しているといえます。一方で成人被害者の中には、酒に酔って手榴弾を触り爆発したケースなど、「行動次第で避けられたのでは」と考えられる事例が少なくありません。

加えて、最近急速に被害が深刻化しているのが「ドローンによる地雷の散布」です。ロシア軍のドローンから「ちょうちょ地雷」とも呼ばれる小型の対人地雷(PFM-1)を投下するケースが増えています。前線から遠く離れた地域にも地雷が散布され、広範な地域が汚染されてしまう、極めて深刻な問題です。

左が地域、右が警報を示す画像

空襲警報を伝えるスマートフォンアプリの画面

「知っている」と「行動できる」の差

今回の出張で私は、TTAの地雷回避教育チームに対して研修を行いました。彼らにもっとも伝えたかったのは、回避教育では「爆発物や地雷の種類を教える」ことに重点が置かれがちですが、本当に大切なのは「被害に遭わないための行動」だということです。

被害に遭わないためにまず必要なのは、リスクの高い地域を感知する力です。どくろマークのサインだけでなく、地元の人が手書きした「地雷」の看板などにも注意を払うことが重要です。強調したいのは、知識を行動につなげること。危険性を知っていても「大丈夫だろう」と近づいたり触れてしまったりする、いわば「赤信号を渡るような」ケースを無くさなければなりません。そのためには、講師が対話しながら受講生に心から納得してもらう必要があります。今回の研修では、そうしたコミュニケーションの方法についても考えてもらいました。

パソコンに向かうAARウクライナ人スタッフと紺野

AARのウクライナ人スタッフと紺野(左)=2026年4月8日

「紛争」への備えと保護

ウクライナでの研修で、他国でAARが実施する地雷回避教育から大きく変えた点は、「紛争への備えと保護」という視点を組み込んだことです。これは、軍事攻撃を受けたときに、いかに自らの身を守るかという内容で、実際に紛争が続いている国ならではのものです。日本の小学校などで行われている避難訓練に近いかもしれません。砲撃にさらされたりした場合には、伏せるなど姿勢を低くし、窓から離れ、頭と首を守るといった実際の動作です。これらは、知識として知っていても、普段から練習していなければ、いざというとき体は動きません。実際に体を動かして練習することが大切です。

緊急避難バッグも同様で、口頭での説明だけでは不十分です。研修では、私自身が日本で用意しているバッグの中身を見てもらいました。水や食料(羊羹と甘納豆)、薬、身分証明書、パスポートのコピー、緊急連絡先、着替え、防寒具など。実際にウクライナの人々が避難する際は、財産や土地の権利書なども重要になるでしょう。

TTA職員が講師として住民の前に立つ場面を想定したロール・プレイも研修に取り入れました。実際に自分の言葉で説明することで、研修を受けるだけでは見えなかった課題が次々と浮かび上がりました。

MTGの様子

「行動の大切さ」について、住民へどう伝えるかを話し合うスタッフら=2026年4月8日

1,500人に命を守る学びを

研修を受けた職員はさっそく回避教育を開始しています。4月には12回セッションを実施し、住民153人が参加しました。2026年末までに約1,500人を対象に実施する予定です。また、回避教育が届かない地域の住民に向けたリーフレットを3,000枚作成して配付するほか、SNSでも危険回避に役立つ情報を発信していく予定です。

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紺野 誠二KONNO Seiji東京事務局

2000年にAARから英国の地雷除去NGO「ヘイロー・トラスト」に出向し、8カ月間、地雷・不発弾除去作業に従事。現在は地雷対策やパキスタン事業を担当。

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