活動レポート Report

穏やかな暮らしが戻る日まで:ミャンマー緊急支援

2021年4月30日

ミャンマーでは2月以降、政治的・社会的混乱が続き、これまでに市民700人以上が死亡する事態となっています。AAR Japan[難民を助ける会]は、混乱の影響で経済的に追い詰められている障がい者や困窮世帯を対象とした緊急支援の準備を進めており、近く食糧・衛生用品の配付を開始します。現地から届いた生の声をお伝えします。

生活がますます苦しく

テイン・リン君(15歳)の家族

テイン・リン君は、脳性まひによる学習障がいと発語障がいがあります。両親はテイン君が幼い頃に家を出て行ってしまい、今は祖父母、弟と4人暮らしです。おじいちゃんが病気で働けなくなったため、おばあちゃんがバスに乗って市場で野菜や果物を買い付け、それを工業団地で働く労働者に売って、細々と生活費を稼いでいました。

しかし、ミャンマーでも2020年3月頃から新型コロナウイルスの感染が広がり、政府の外出規制措置で工場が休業になって、おばあちゃんの売り上げは大きく落ち込みました。AARが実施する食糧支援などで何とか生活していたものの、ぎりぎりの状況が続いていました。

追い打ちを掛けるように、2021年2月に起きた非常事態で治安が一気に悪化し、バスも運行されなくなり、市場も閉まってしまいました。一家が住む地域は日常的に銃声が響くなど、とりわけ治安が悪く、売り上げはゼロになりました。おじいちゃんの治療費の借金に加えて、今は近所の人からも借金しており、おばあちゃんは「このままでは利息の返済もできなくなってしまう」と嘆いています。

テイン君はすでに1年以上、満足に教育を受けられない状況が続いています。昨年3月まで通っていた障がい児のデイケアセンターは、コロナ禍で対面式の授業を取り止め、オンライン授業を行っていましたが、今年3月以降は混乱の影響で携帯電話からのインターネット接続が断たれてしまい、テイン君は授業に参加できなくなりました。

治安が悪くて外出できないため、最近は一日中、窓から外を見て過ごしています。時折、近隣住民が暴力を受けている場面を目にしては、指差して助けを求めるようなまなざしでおばあちゃんを見つめます。そのたびに、おばあちゃんは何とも言えない悲しい気持ちになります。今はただ家の中で息を潜め、安心できる日が戻ってくることを祈るばかりです。

わずかな貯金を取り崩して

チェー・ジン・ウーちゃん(3歳)の家族

チェー・ジン・ウーちゃんは、脳性まひで筋肉が萎縮しており、自分で立ったり座ったりすることも難しい状態です。お父さんはチェーちゃんが生まれてすぐ亡くなったため、今はお母さんと4人の兄弟と一緒に、いとこの家に住んでいます。

いとこは自宅で自転車の修理店を営んでおり、コロナ禍で売り上げは3分の2に減りましたが、それでも感染防止に気を配りながら仕事を続けていました。AARの理学療法士が個別訪問で行っていたリハビリもできなくなりましたが、分かりやすい教本を配付し、ビデオ電話を通してお母さんにリハビリ方法を指導していました。

しかし、今年2月以降は一家が暮らす地区でも住民20人以上が死亡するなど、治安が極度に悪化しています。チェーちゃんは、家の外から銃声や衝突の音が聞こえてくると怯えるようになりました。一家は身の危険を感じて、ヤンゴン西方にある故郷のエヤワディー地域に避難しています。同地域は比較的安全ですが、仕事がないため、わずかな貯蓄を切り崩して生活しています。お母さんは「少しでも生活費を稼ぎ、娘に適切なリハビリを受けさせるためにヤンゴンに戻りたいのですが、見込みが全く立たちません」と肩を落としています。

混乱の長期化に伴い、市民生活がますます苦しくなることが予想されます。AARは治安状況を慎重に見極めながら、現地スタッフが調達した物資を支援対象の世帯に直接届けます。私たちは社会的に弱い立場に置かれている障がい者・障がい児の家庭を引き続きサポートしてまいります。皆さまの温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。

ご支援のお願い

ミャンマー緊急支援への
ご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

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