記録的な洪水被害に見舞われたパキスタンでは、国土の3分の1が水没し、死者は約1,300人に上ります(9月5日現在)。AAR Japan[難民を助ける会]は、同国北西部ハイバル・パフトゥンハー州で被災者への食料配付や給水などの緊急支援を実施しています。AARイスラマバード事務所の小柳勇人が現地から報告します。
給水車で安全な水を供給
洪水の発生から約1週間、被災地ではようやく水が引き、被災者は自宅に戻って日常生活を取り戻そうとしています。現地では安全な水の確保が難しいため、AARは給水車(容量5,000リットル)を手配し、4日に水の供給を開始しました。これまで地域住民はポンプ式の浅い井戸で泥交じりの地下水をくみ上げていましたが、洪水で一帯が汚染されたため、より安全な水を使えるようにしました。それでも飲み水にする場合は、必ず一度沸騰させてから飲むように呼び掛けながら、毎日給水を行っています。
AARが支援しているのは、日雇い労働者など貧困世帯が多い地区です。家々を訪ねると、ロティ(パン)やダール(豆カレー)を食べている家族を見かけましたが、野菜や卵、肉類など栄養価の高い食事は望めず、「育ち盛りの子どもたちに何か食べさせたくても、おカネがなくて買えない」と、袋入りのポテトチップスだけを与えられている子どももいました。洪水被害が貧困にあえぐ人々の苦境にさらに追い打ちを掛けているのです。
不衛生な環境、感染症の懸念も
パキスタンでは料理を手で食べる文化がありますが、この地区では食事の前に手を洗う習慣があまり浸透していないようです。洪水で何もかも泥まみれになった集落で、子どもたちがむやみに口の中に手を入れたり、拾った棒切れを口にしたりしている姿をよく見かけます。がれきの中を裸足で走り回っている子どもも多く、コレラやチフス、破傷風などの感染症にかかる危険性を感じました。
栄養のある食事もとれず、洪水の後片付けで体力を消耗している貧しい被災者が、不衛生な環境で病気になりやすいのは明らかであり、特に大人より体力がない子どもたちが感染すれば、それこそ命に関わります。そこで、AARは石けんを配って手洗いを呼び掛けるなど、衛生啓発に取り組んでいます。人々の衛生観念を変えることも、被災者の健康を守ることにつながると考えます。
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小柳 勇人OYANAGI Yutoパキスタン事務所
民間企業勤務や教員を経て2021年12月にAARに入職、2022年3月よりパキスタン・イスラマバード事務所駐在。