活動レポート Report

パキスタン:洪水被災地に女性用トイレと手洗い場を整備

2022年12月14日

AAR Japan[難民を助ける会]は、今年8月に発生したパキスタン大洪水の被災者支援を連日続けています。特に被害が大きかった同国中西部ハイバルパフトゥンハー州のアフガニスタン難民居住地では11月、女性用の簡易トイレと手洗い場を整備しました。AARノウシェラ事務所の職員ズベイダが報告します。

小さいテントの前に設置された青い給水タンク

AARが難民居住地に設置した女性用トイレ(オレンジの小屋)と手洗い場

女性を悩ますトイレの問題

ハイバルパフトゥンハー州ノウシェラ郡のケシギパヤン。ここは、アフガニスタンから避難してきた難民が暮らす難民居住地です。87世帯約600人の難民は被災前、レンガや泥やワラで造った家に住んでいましたが、洪水で跡形もなく流されてしまいました。被災後は国連機関が建てたテントに暮らしています。

被災以降、特に女性を悩ませていたのが、トイレの問題でした。洪水が起きてすぐ、国連機関が居住地内に簡易トイレを作りましたが、使用者である難民の間でトイレを誰がどのように使うのか、掃除や管理の責任を誰が引き受けるのかなどが定まっておらず、次第に一部の人がトイレを占有するなどの問題が発生しました。AARによる9月の調査では「慣習として男性は女性と同じトイレを使用するのを好まないため、女性はトイレを使うことができず、身体的・精神的に苦痛を強いられている」との報告がありました。

さらに、今まで難民居住地の使用を認めていた土地の地主が、洪水を機に難民に立ち退きを要求。住民たちは10月中旬、数百メートル離れた新たな場所にテントを移動させ、その際に簡易トイレは取り壊されました。新たな居住場所にはトイレがなく、女性や子どもを含め難民は屋外で用を足さざるを得ない状態になり、安全面や衛生面で大きな懸念となっていました。

話をする二人の女性

難民女性の話を聞くAAR職員のズベイダ(右)

住民が話し合って使用ルール決定

新たな土地の地主は、難民居住地としての使用を認めてくれたため、立ち退きの心配はなくなりました。AARは、数カ月程度使用できる簡易トイレと手洗い場の設置を決め、設置場所について難民と協議したうえで、11月中旬に女性用トイレ5基、簡易手洗い場5カ所を作りました。

11月29日には、トイレと手洗い場の使用ルールを決める住民会合を開き、建設したトイレは女性たち共同で使用すること、使用後は消臭・殺菌効果のある灰や石灰の粉を便槽の中に入れること、手洗い場のタンクには毎日水を足すことなどのルールを取り決めました。また、きちんと使用・管理されているかを確認する責任者も任命しました。

「これからは安心して使えます」

居住地に住むサディカ・グルさん(35歳)は、「今までは明るい昼間はトイレを我慢し、暗い夜中に外に出て済ませていたので、不便だったし、いつも怖く感じていました。においや衛生面でもトイレがないことは、とても切実な問題でした。女性が安心して使えるトイレができたのは、暮らしの再建に向けた大きな一歩です」と話しました。

子どもを連れてトイレに入る女性

トイレを確認する難民の女性

AARは今後、男性用トイレも含めて、さらに5~10基のトイレと手洗い場を作る予定です。また越冬支援としての寝具や物資配付も併せて実施していきます。

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ズベイダパキスタン・ノウシェラ事務所

国連や国際NGOのフィールドスタッフとして勤務後、2022年10月にAARに入職。ノウシェラ事務所で、主に女性や子どもの洪水被災者支援業務を担当。

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