長年にわたる戦乱で今なお多数の地雷・不発弾が放置されているアフガニスタン。AAR Japan[難民を助ける会]は英国のNGO「ヘイロー・トラスト」と連携して地雷除去事業を続けているほか、被害を防ぐための「回避教育」や地雷被害者支援に取り組んでいます。AARとヘイローの共同プロジェクトでは2022年7月~12月、地雷や爆発物1,107個を除去することができました。現地から報告します。(写真・動画はいずれもヘイロー・トラスト撮影)
右脚を失った14歳少年の訴え
2022年に除去作業を実施したのは、首都カブールに近いマイダン・ワルダック県とローガル県です。ローガル県のオニ・サイダーン村に住むサイード・イスラホディン君(14歳)は、近くの丘で薪拾いをしていた時、何らかの爆発物に触れて右脚を失いました。旧ソ連軍のアフガニスタン侵攻(1979~89年)以来、この地域には大量の地雷が埋設されたままになっており、サイード君を含めて村人7人が被害に遭っています。
「村の周りの丘に埋まっている地雷や不発弾を取り除いてほしい。そうすれば、皆が安心して薪を集めたり、子どもたちが遊んだりできるから」とサイード君。この村では12月に6万5,635平方メートルの土地を調査し、12個もの地雷・爆発物を取り除きました。これによって、住民1,820人がこのエリアを安全に通行したり利用したりできるようになりました。
サッカー場の広さに爆発物20個
今期の事業ではマイダン・ワルダック県の51万4,887平方メートル、ローガル県の13万4,566平方メートルで除去作業を行い、取り除いた爆発物はマイダン・ワルダック県1,069個、ローガル県38個の計1,107個に上ります。
このうちマイダン・ワルダック県シサイ村では、30万2,561平方メートルの土地から実に835個の地雷など爆発物を除去しました。362平方メートルに1個の爆発物があった計算で、これはサッカー場の広さ(約7,140平方メートル)に約20個が埋まっているのに等しい異常な状況でした。
シサイ村は首都カブールと東部の要衝カンダハルを結ぶ街道沿いに位置し、ソ連軍に占領された1980年代以降、地雷が多数埋設されていました。また、近年もイスラム主義勢力タリバンと旧アフガニスタン国軍の激しい戦闘地が長期にわたって続いた地域です。地雷除去によって安全が確認され、今後は農地や牧草地として活用されることが期待されます。
「地雷がない」ことを確認する意味
一方、ローガル県のある地域(1,847平方メートル)では、爆発物がひとつも見つかりませんでした。しかし、周囲には複数の集落があり、行き来に便利なこの地域の安全が確認されたことは、コミュニティ間の分断を防ぎ、往来を活発にして日常生活の利便性を高める効果が見込まれます。このように、「地雷があるかも知れない」不安な状態を放置するのではなく、「地雷がない」安全な土地であることを確認するのには大きな意味があります。今期のプロジェクトでは、この土地の利用者4,946人、および周辺地域の住民7,781人の安全を確保することができました。
AAR Japanは引き続きヘイロー・トラストへの資金提供を通じて、アフガニスタンの地雷除去作業を進めるとともに、子どもをはじめとする地域住民を地雷・不発弾の危険から守る回避教育、地雷被害者を含む障がい者支援や障がい児の就学支援に取り組んでまいります。