AAR Japan[難民を助ける会]は2012年以降、トルコ国内でシリア難民支援を開始し、2022年からはシリア難民や災害などの影響を受けた人々を支える現地の小規模NGOを支援しています。こうしたNGOは「コミュニティに基づいた団体(Community Based Organization:CBO)」と呼ばれます。一般には聞きなれないCBO支援についてAARトルコ事務所の担当スタッフが報告します。
支援の裾野を広げるために
AARはトルコ国内で暮らすシリア難民、および難民を受け入れている地域(ホストコミュニティ)で、個々人のニーズに沿った個別支援(ケースマネジメント)を実施してきました。他方、現地のCBOが個別支援のノウハウを習得すれば、支援の裾野が広がります。そこで、AARは近年、CBO支援を重視しています。
例えば、AARはCBOのスタッフと毎週、個別支援員会を開いていますが、ある時、CBO側からこんな相談がありました。「障がいがある難民Aさんが、病院には行きたくないけれど、補助具を買うためのおカネがほしいと言っています」。この場合、AARはすぐに現金を手配することはせず、必要な医療を継続的に受けることがより重要だと判断しました。Aさんは以前、病院で差別を受けたため行きたくないのかも知れないし、言語の壁があるのかも知れません。そこで私たちはCBOを通じてAさんから詳しく話を聞きました。
その結果、Aさんは以前に病院で不快な対応をされた経験があり、通院をためらっていることが分かりました。そこでCBOスタッフがAさんを説得し、付き添いと一緒に病院に行って、無事に治療を受けることができたのです。もちろん対応は事案次第で、補助具を必要とする場合は病院で診断書をもらい、適切な補助具を購入できるようにサポートしたり、経済的に困窮している人にはAARが補助具を提供したりすることも考えられます。
また、障がい年金など公的支援があることを知らなかったり、知っていても利用できていなかったりする場合もあり、個別支援で丁寧にサポートします。こうした個別支援は、個々の事情を客観的に評価したうえで、さまざまな支援のネットワークや制度を活用しながら計画的に対応する必要があるため、CBOの能力強化が必要です。
CBOの飛躍的な成長
AARが連携するCBOに助言と指導を続けて、数カ月後には自分たちで適切な支援計画を策定・提案できるようになりました。2023年8月には、シリア難民が多数居住するトルコ南東部シャンルウルファ県のCBOからアイデアが提案され、2月に起きたトルコ地震後、小学校入学の登録をしているのに、子どもに鉛筆やノートなどの学用品を買う余裕がない被災難民の世帯に対して、AARの資金で必要な学用品を届ける事業が実現しました。
CBOスタッフには意識が高い人材が多く、適切な助言と支援をすれば、短期間でも飛躍的に成長します。AARの本事業マネージャー、モアタズ・ファラーは「この仕事で本当にうれしいのは、AARとしての支援活動が終わった後も、CBOが自力ですばらしい事業計画を策定しているのを知った時です」と話します。AARは自前の事業に加え、CBO支援を通じて、その先にいる人々のニーズに応えてまいります。
※CBO支援は皆さまからのご寄付に加え、ジャパン・プラットフォーム(JPF)および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の助成を受けて実施しています。
モアタズ・ファラートルコ事務所
パートナーシップ兼キャパシティ・ビルディング・マネージャー。シリア出身。2012年にトルコに避難、複数の人道支援NGOを経て、2016年AAR入職。アラビア語、英語、トルコ語が堪能。
ナス・チャイNas Çayトルコ事務所
プロテクション兼キャパシティ・ビルディング・オフィサー。心理カウンセリングとガイダンス、心理学の2つの学士号を取得後、トルコ国内の複数のNGOで心理社会的支援に取り組んできた。