AAR Japan[難民を助ける会]は、パキスタンのハイバル・パフトゥンハー州の小学校で、トイレや手洗い場などの衛生施設を整備しています。今年度は皆さまからのご寄付に加え、TOTO水環境基金からの助成を受け、同州ハリプール郡の公立女子小学校に支援を届けました。事業を担当した、現地職員のマリアム・シャーが報告します。
児童370人にトイレひとつ
教育予算の不足などが理由で、ハリプール郡の学校の多くは、井戸やトイレなどの基本的な衛生施設がありません。施設があっても、清掃用具の購入資金が工面できないなどメンテナンスが行き届かず、井戸やトイレが汚れたり壊れたりしたまま放置されていることも少なくありません。
こうした不衛生な状況は、児童が登校を嫌がるだけでなく、親が子どもを学校に行かせたがらない原因にもなっています。
AARが支援した学校も、衛生施設が不足していました。児童370人に対して、5つあるトイレのうち使用可能なのはたった1つ。他はすべて配管や汚物が詰まっており、手洗い場の蛇口もすべて壊れていました。
コロナ感染予防にも貢献
AARは、すべてのトイレを修繕して白いタイルで明るい内装にリフォームし、障がいのある子も使いやすい洋式便座を備えたバリアフリートイレも新設しました。新しい手洗い場の壁面には正しい手洗いの仕方が描かれ、清潔感のある雰囲気に一変しました。
校長のアキラットさんは、「壁画を見て子どもたちも手洗いの大切さが理解できます。新型コロナウイルスの流行で、これまで以上に手洗いを励行しなければならないので、AARの支援は最適なタイミングでした」と話します。
2年生のラムシャさん(6歳)は、「男女別のトイレができたのが嬉しい」と喜びます。これまでトイレは男女共用で、使用中に男子がいたずらでカギをかけることもあったそうです。
家庭と地域を巻き込んで
こうした衛生支援では、教員や児童の衛生知識を高めることや、施設を維持管理する体制整備も重要です。AARは教員や保護者向けに4日間の研修を実施し、正しい手洗いや歯磨きの方法、家庭でできる水の浄化方法、感染症の知識や対策、児童への衛生関連の指導方法などを伝えました。
研修を活かして、同校では「世界手洗いの日(10月15日)」や「トイレの日(11月19日)」に合わせて、衛生啓発の発表会をするなど、正しい衛生知識の定着や環境管理に力を入れるようになりました。
国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)には、「質の高い教育をみんなに」「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられています。AARの活動は決して大きなものではありませんが、コツコツと続けていくことでSDGsの目標達成に貢献すると信じています。子どもたちが安心して学校生活を送れるように、皆さまの温かいご支援を引き続きお願いい申し上げます。
マリアム・シャーパキスタン・ハリプール事務所
大学卒業後、数学の高校教員として2年間勤務。「社会やコミュニティのために働きたい」と2018年からAARへ