AAR Japan[難民を助ける会]は、パキスタンのハイバル・パフトゥンハー州ハリプール郡およびアボタバード郡にある小学校8校で、障がいの有無にかかわらず子どもたちが一緒に学べる環境を整える、インクルーシブ教育に取り組んでいます。このほど、暑い夏を前にインクルーシブ教育の標語を記した水筒を子どもたちに配付しました。

障がいに関する啓発研修の後、インクルーシブ教育の標語の入った水筒を受け取った児童=アボタバード郡公立ハヴェリアン・ビレッジ女子小学校で2026年5月18日
猛暑の学校で広げる、インクルーシブ教育
アボタバード郡は、首都イスラマバードから車で2時間半ほど。標高約1,300メートルの山あいにあるパキスタンの中では比較的涼しい地域ですが、それでも、5月中旬からは連日最高気温が30度を超える日々が続きます。学校の教室にはエアコンがなく、電気があれば扇風機が回りますが、停電の日も少なくありません。特に女子児童はどんなに暑くても長袖長ズボンにショールで頭を覆い、暑い教室で授業を受けています。

子どもたちが学校の周辺を回り、障がいがあることで何が不便になるかを考える研修=ハリプール郡の女子小学校で2026年1月
AARは、2023年からこの地域でインクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。2025年9月からは、対象8校でバリアフリー環境を整えたり、教員や保護者を対象に研修を行ったりしています。啓発授業には計2,010人の子どもが参加し、点字や手話、アクセシビリティ(利用のしやすさ)の基礎を学びました。
これらの活動を通じて、2026年5月末までに、障がいのある子ども39人を含む229人が新たに就学しています。

学んだことをポスターにして発表しました
記憶に残る形で標語伝える
「障がいのある子もない子も、ともに学ぼう」というメッセージを広めるため、先生や地域の人々も一丸となってこの活動に取り組んでいます。ただ、どんな大切なメッセージも、時が過ぎれば忘れられてしまうもの。少しでも子どもたちの記憶に残るようにするにはどうすればよいか——そう考えて、メッセージ入りの水筒を配付することにしました。5月末までに8校の2,754人に「すべての子どものためのインクルーシブ教育」と書かれた水筒を配りました。
水筒を受け取った子どもたちは、「とても嬉しい」と笑顔を見せてくれました。暑い時期に学校で水を飲むのに欠かせないため、「大切に使う」「毎日持ってくる」と話す子も大勢います。また、研修で学んだことを日々の生活で活かしているという声も多く聞かれました。「近所に車いすを使う女の子がいて、外出のときはお店まで付き添っているよ」「学校で、書くことが苦手な友だちや、先生の話を理解しづらい友だちがいたら助けています」。子どもたちは、笑顔で話してくれました。

水筒を受け取り、笑顔を見せる児童
パキスタンの暑い夏、熱中症を防ぐためにも水分補給は欠かせません。水筒に水を入れておけば、休み時間にも、学校帰りにも飲むことができるし、手にするたびにメッセージが目に入り、少しずつ定着していきます。家族の目にも触れるので、啓発の輪はさらに広がります。
水筒を上手に使って、パキスタンの暑い夏を元気に乗り切ってほしい。そして、一人でも多くの障がい児が地元の学校で学べるようになってほしい。そう願って、活動に取り組んでいます。AARのパキスタンでの活動にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。
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紺野 誠二KONNO SeijiAARパキスタン事業担当
2000年AARに入職し、2005年パキスタン大地震の被災者支援に従事。その後も、東京とパキスタンを行き来しながらパキスタン事業に携わり、現在は、東京事務所で地雷・不発弾対策なども担当



