熊本地震の発生から1カ月が経ちます。発災直後の混乱は落ち着きつつあるものの、避難生活の長期化や家屋の再建など、課題は次の段階へと移りつつあります。被災地の現状と今後必要になる支援について、緊急支援を統括する事務局長の古川千晶がご報告します。
被災地に生きる「10年前の教訓」

AAR事務局長の古川千晶=熊本県八代市で8月17日
10年前の熊本地震(2016年)で私は、緊急支援チームの一員として物資配付や障がい者施設の復旧などの活動に従事しました。今回は地震発生から2週間ほどが経った8月中旬、支援活動の調整と現地のニーズ把握のために被災地に入りました。そこで何人もの方から耳にしたのが、「10年前の教訓」という言葉です。今回の震災において、行政の対応は迅速でした。すぐに各地に避難所が開設され、物資を受け入れ、配付拠点も早い段階から整えられていました。
そして10年前の経験は、住民の皆さまの中でも確かに生かされていました。例えば、行政の対応が追い付いていない避難所では、地域の方々が率先して整備を進めていました。また、「あそこの入口には見張り役が必要だから、順番に担当しよう」など、10年前の避難生活の経験に基づいた自発的な動きも見られました。
「ラストワンマイル」を埋める支援

児童家庭支援センターぽぴんずに設置された支援物資を受け取るスペース=宇城市で8月17日
印象的だったのが、住民による自発的な物資配付拠点が各地で設置されていたことです。支援物資が集積所までは届いているのに、それを必要としている人の手元までには届かないという、いわゆる「ラストワンマイル」の問題が今回の震災でも生じています。この課題に対応するため、住民が自発的に物資配付の拠点を立ち上げ、その地域の中で物資を届ける動きが生まれています。
AARは、こうした物資配付拠点のひとつとして宇城市で活動する、「ポピンズくまもと」への支援を開始しています。普段は児童家庭支援センターとして活動する団体ですが、今回の震災対応として、大きな集積所から物資を持ち込んで、地域で配付する活動を行っています。私が訪れた時は、高齢の方が飲料水などの重い荷物を持ち帰るのを、夏休み中の子どもたちが手伝う姿がありました。
ただ、県の大規模集積所でも、生理用品や食品用ラップなどの物資がなかなか手に入りにくい場合があります。AARは、こうした細かいニーズに即した物資を迅速に提供することで、ポピンズくまもとの活動をサポートしています。被災地の物流は回復しつつありますが、9月中旬ころまでは「ラストワンマイル」を埋める支援を続ける見通しです。
「水」の課題

公民館に設置したシャワールームを確認するAAR古川=八代市で8月16日
被災地で大きな課題となっているのが「水」です。断水の解消が報道されていますが、これは主に基幹の水道管が復旧したという意味で、各家庭には水が届いていない、という地域が多く残されています。通水後も宅地内の漏水対応などによって、すぐに通常の水利用に戻れない家庭も多くあります。また、水に砂が混ざっているため、飲用はもちろん入浴にも使えず、トイレだけにしか使えないという世帯もあります。
水が使えなければ調理ができないため、今後しばらくは炊き出しへのニーズも続く見通しです。AARは地域の状況に合わせて、協力団体と連携しながら炊き出しの活動を続けていきます。同じように断水が長引いた能登半島地震の被災地でも、AARは長期間にわたり炊き出しを続けました。

NPO法人ピースプロジェクトと連携して炊き出し
また、日用品などへの需要が落ち着いてきても、ペットボトルの飲料水へのニーズは長く続く可能性があり、AARは配付を継続します。加えて、仮設のシャワーを設置する取り組みも、地域の状況に合わせて続けていく予定です。
障がい者など要配慮者への支援は中長期的に

福祉施設への物資を積み込む緊急支援チームの生田目
障がいのある方は避難生活での環境の変化による影響を受けやすいうえ、通い慣れた事業所や福祉サービスが止まると生活再建にも時間がかかるため、必要となる支援は中長期にわたります。AARは、被災した障がい者を継続的に支援する「被災地障害者センター」への支援を開始しています。
残念ながら、10年前に建物の被害を受け、今回再び損壊してしまった障がい者施設もあります。今後はこうした施設の復旧、設備の支援にも取り組んでいきます。公共入浴施設を利用することに抵抗のある方へのシャワー支援など、外国人被災者への支援も継続します。
10年前の熊本地震の被災者支援を終えた時、再び熊本で緊急支援を行うことになるとは思いもしませんでした。AARは、二度の大きな震災を乗り越えようとする熊本の方々と共に、活動を続けてまいります。引き続き、AARの熊本地震緊急支援にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。

古川 千晶FURUKAWA Chiaki事務局長
大学卒業後、民間企業を経てイギリスの大学院で国際開発学を学んだ後、2010 年にAAR へ。駐在員としてハイチで活動、2012 年より東京事務局でアフガニスタン、フィリピン、ネパール、ミャンマーなどの緊急人道支援に従事。また、熊本地震(2016年)、西日本豪雨、能登半島地震などの国内災害にも従事。2021年より事務局長



